黒鷲の旅団
3日目(5)冒険者相手に冒険する
「おじいちゃーん! 勝ったよー!」
街に帰還すると、ハミルトン爺さんの姿。
心配して、門まで迎えに来ていた。
ユッタは誇らしげ。
サイクロプスの牙を掲げて見せる。
ふと、遠目に見える悪ガキども。
明らかにビビっている。
これで手を出して来なくなると良いが。
ともあれ戦利品は売却へ。
魔女協会で買い取りに回す。
フェドラは貯金のやり直し。
消えた金が戻っても、まだ足りないんだ。
マリナの家も利息の返済こそ凌いだが。
まだまだお金は必要だ。
夕食時、また少し話そう。
それまでは自由時間としようか。
一旦解散する。
俺は酒場に戻り、納品依頼を達成。
子供達が手伝ってくれた。
集めるのは楽だった。
後でまた褒めてやらないと。
「ふっふふ。可愛がってるねえ……
あ、そうだハインちゃん。
冒険者ギルドが顔見せて欲しいってさ」
冒険者ギルド……は、冒険者の本部。
詰め所みたいな奴だったかな。
酒場でも依頼は受けられるのだが。
取り纏めているのはギルドの方。
賞金首サイクロの討伐もある。
どうも興味を持たれたか。
本業は傭兵なんだがな。
冒険者の仕事も収入源だ。
女将の顔を立てる意味もある。
足を運んでみよう。
「よう、来たね! 新進気鋭!」
ギルドに入ると、支部長から歓迎された。
冒険者のルールについて説明を受ける。
階級申請とやらを試して。
結果、俺のランクが鉄等級に上がった。
順番的には無等級の1つ上らしい。
この、等級が上がる利点は?
等級に応じたサービスを受けられる。
頼めば食事や宿泊施設の利用。
物資なども手配される様だ。
「あいつ、アレだろ〜。
スラムのガキ連れて、お山の大将」
「そんで、その前は死体剥ぎしてだぜ。
ダッセェー」
モヒカンやらスキンヘッドやら。
後ろの席にヒャッハーな感じの男3人組。
どうやら俺の悪評。こき下ろされている。
PC、神人の評価値。
名声値とか人望値とか。
これはウワサとしてNPCに伝わる。
結果、こういう態度に現れて来るらしい。
俺の名声値、現在5。
これもその、評価値の結果か。
あるいはその評価が数値化されて5か。
「あたしは良いと思うなぁ〜。
子供好きなんでしょ?」
「鍛冶屋でも働いてるんだって?」
お姉さん2人にフォローされた?
あれは人望値の方の結果だろうか。
人望値、現在18。
女将とか魔女さん達の口利きだろう。
気を悪くしないでくれと支部長。
そりゃもう手遅れの感だが。
マスター、お姉さん2人に何かお酒を。
奢るので何かアドバイスとか頂けないか。
「おっ、分かってるねー。
可愛い後輩じゃーん」
「こぉら、調子に乗らないー」
可愛い声で口が悪い魔法剣士ジェイン。
他方、落ち着いた声で可愛い事を言う。
こちらは魔法弓士ペネロペ。
ペネロペさんも剣を下げてるんだが。
その辺は適当だって?
じゃあ、俺は魔法銃士としておこうか。
兼業冒険者、半分傭兵のハインリヒです。
「同じくトゥーリカちゃんです。
ドヤァー」
ポケットからトゥーリカ。
お前、ついて来てたのか。
「ああっ、可愛い! ナニコレ!」
「わ、妖精だ。
妖精を見つけると幸せになれるんだよ」
そうかね。それは良かった。
「そうだよー、幸せ運ぶよ。えへんぷい。
良かったでしょ、朝から良いモン見れて」
その辺はゲフンゴフンだな……
お姉さん2人からアドバイス。
武器技は技能系ギルドで習得出来るとか。
兵士の訓練場でも初歩的な技は身に付く。
市販の指南書から得られるものもあると。
ありがとう。後で探してみよう。
「ぎゃはは!
次はガキに混じってお勉強かよ!」
「ウケる! チョー地味!
地味な努力!」
ヒャッハーさんが喜んでいる。
あんなハゲほっときなよとジェインさん。
ハゲというかモヒカンというか。
まあ、どうする気も無いが……
面白くも無いな。
ヒャッハーさん達にも酒を奢ろう。
マスター、強い酒をボトルで3本頼む。
と、ウォッカが出て来る。あるんだ?
じゃあ、俺にも1本貰おう。
ヒャッハーの目の前でラッパ飲み。
1本飲み干して見せて。
連中の前にゴトリとボトルを置く。
これ、お前らの分な、と指差して。
口の形で逃げんなよと言い残す。
そのままギルドを後にした。
アルコールは身体に毒だ。
解毒魔法で分解したのは内緒さ。
前へ
/黒鷲の旅団トップへ
/次へ
|