黒鷲の旅団
31日目(2)朝稽古〜烈風レーネ返し〜
「りゃッ! はああ!」
巻き打ちを斬り落とされる。
続けて飛んで来る燕返しをパリィ。
僅かなイオン臭に左足を引く。
鼻先を掠めて雷撃魔法が落ちた。
少し触れたか。左手に痺れ。
右からは剣を左に持ち替えたレーネ。
雷撃と時間差で突きを見舞って来る。
魔法ありとか言うんじゃなかったな。
早朝。朝食前の朝稽古。
今日は直接レーネの相手をした。
お互い一刀流。魔法あり。
勝ったら軽く何かご褒美と。
これが余計だっただろうか。
かなり気合を入れて挑んで来ている。
突きを往なして当て身。
レーネは押されるまま後退。
鍔迫り合いを嫌うのは偉い。
覚醒状態なら力も増すレーネ。
本気になれば俺とも押し合えるのだが。
稽古中。他の子達も見ている。
筋力、体格差で劣る子も居る。
力勝負は手本にならない。
剣を交差して力比べなんかしない。
というだけでもないか。
俺、少し踏み込み振り。
レーネ、逆風の太刀。
フェイントに気付いて半分止めたが。
反撃の姿勢も虎視眈々だな。
「インビジブル!」
うおっと。
レーネ、腕を横に振りながら。
口で簡易詠唱の透明魔法。
俺は咄嗟に身を伏せて回避。
腕で無詠唱の何かを補助したな。
腕の軌道上に何かを放った。
それを放りながら透明魔法で隠蔽か。
頭の上を熱い何かが通り過ぎる気配。
後方で爆発音。怖い怖い。
身を伏せた俺にレーネの追撃。
袈裟斬り。を後退して回避。
一拍遅れて雷撃が降って来る。
反射魔法付与。斬り払い。
雷撃を打ち払った所にレーネ逆袈裟。
武器受けで流すが引き落とせない。
レーネは力いっぱい振って来ない。
堅実で頼もしい。
実戦を意識した訓練だ。
当てて勝利のスポーツとは違う。
実戦で相討ちでは死んでしまう。
勝つより負けない方が大事。
俺は後退しながら泥濘魔法。
レーネは浮遊魔法で対応。
斬り結ぶ。剣が凍る。
付与は凍結魔法か。
ジワジワ体力を奪って来る。
俺は冷気を熱風魔法で払う。
レーネ、数歩退いて。次の手は。
「ウインドボルト! エスケープ!」
ん? 風系魔法を投射。
投射したが俺に届く前に消えた。
そして転移魔法の脱出だが。
レーネ自身に掛けた訳じゃない。
彼女は剣を手に突っ込んで来る。
……なるほど?
俺はレーネの剣を武器受け。
レーネは側面方向へ退避。
俺は反射魔法を展開。
そこへ風魔法が飛んで来て。
「んぎゃふ!?」
再び追撃態勢に移っていたレーネ。
その顔面に風魔法が反射した。
引っ繰り返る。大丈夫か。
一応勝負ありで良いかな。
レーネを助け起こして診察。
元々、各種防御魔法付きだ。
大した怪我は無さそう。
「う、ううーん。
初見で躱されるとは。
流石はおじさまです。
判断が早くて」
まあ、狙いは面白かったけどな。
エスケープは無詠唱が良かったか。
自分の側に引き戻す転移魔法。
これを自分の投射魔法に掛けた。
自分が前に出て壁になる。隠す。
1人連携攻撃。俺も勉強になったよ。
「ごはんだぞー!」
「ごはんごはんー!」
呼びに来たのはツェンタとトゥリン。
ベルタとニアも一緒か。
新人が早々に打ち解けてて嬉しい。
俺達もメシにしよう。
今日の方針を話し合いたい。
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