黒鷲の旅団
31日目(4)黒鷲さん、ぽいぽいされる
「ごめーん、置かせて―」
「マジごめーん」
ぽいぽいぽいぽい……
ポータルから次々にホウキで飛来。
荷物を投下しては去って行く魔女達。
ダメとは言わんけれどもだ。
せめて端に寄せておくれ。
屋敷前の通りが詰まってしまう。
荷物を持って来る魔女達。
その事情はシャンタルに聞いた。
神聖教会から監査が入るらしい。
異端審問官達が迫っている。
監査を受け入れる必要があった。
やましい所が無いと証明したい。
続く小麦不足。拡がる麦角菌汚染。
他、大小の疫病騒ぎ。
一時は天然痘も出ていたな。
この原因が魔女だという言いがかりだ。
魔女がばら撒いたと吹聴する者が居る。
こいつが市民を先導している。
魔女協会の門に押し掛けている。
その一団の一部が神聖教会に嘆願した。
魔女を成敗にするのに力を貸せと。
これを請けた大司教アルディス。
市民を宥め神殿騎士団を派遣準備。
一方で魔女協会にリーク。
今から行くから準備せよと。
暗に見られたくない物は隠しておけと。
で、隠し場所が俺の家とかー……
搬送が転移魔法でない理由。
転移魔法は座標指定だけじゃない。
転送先のイメージが必要になる。
そこへ来て神人の住居だ。
増改築でイメージが変わる。
頻繁に来ているのは3人ぐらいか。
ヘリヤ、シャンタル、フレスさん。
3人で協会全体は回れまい。
それぞれの手段で運び出した様子。
ぽいぽいぽぽいぽいぽぽい……
荷物が雑然と落とされて来る。
このままじゃ道が塞がる。
運搬されて来た物品に浮遊魔法。
通りの端に移動させる。
毒々しい色の薬品が入った容器。
怪しげな薬草や魔物素材。
図書館の暗部、ヤバげな魔導書。
何かの研究を記した羊皮紙、等々。
組織として外部に見せたくない物。
あと、個人的な所有物もあるかな。
中身をぶちまけている箱。
乱暴に落とすから口が開いて……
個人的な手帳などはまだ良い。
衣類、下着とか困るな。
こちとら成人男性だ。
女子の下着持ってウロウロできんわ。
下着……下着だよな?
布の位置とか面積がおかしい物がある。
下着と別に付ける術具かもしれない。
鑑定スキルは下着だと言ってるけど。
詳しく考えるのは止めよう。
「ふーん。ほっほお」
下着を拾って見ているアンヌ。
おーい、あんまりジロジロ見るなよ。
同性の下着が興味を引くのか?
「ん? ふふん。
こういうのが流行りなのかなって。
魔王軍って文化が少し遅れてるのよ。
取り込むより滅ぼすのが早くて」
ぶふっ! これもうヒモじゃん」
見せるな。拡げるな。
他人の下着で遊ぶでない。
箱に下着をポポイと投げて。
締めたフタの上に座るアンヌ。
手振りで促す……分かってるよ。
この状況を聞いてどうしよう、だ。
方針を纏め直したい。
「あーと、あたしがエルゼ」
俺が街を。
「あとーお姉とみんなで村?」
そうだな。そんな所か。
アンヌがエルゼを迎えに行く。
ポータルでブラショヴまで。
念の為、帰還スクロール持参。
俺は魔女協会の様子を見て来る。
帰りにドルセアやマリレナを拾うとして。
スカウトは街の安全を確保してから。
各隊隊長と出向く事にする。
その間、子供達はトゥルチャ方面へ。
時間潰しつつ魔物掃除と鍛錬しつつ。
引率はジュス姉さん、マイナさん。
送る前に状況だけ確認したいな。
レイニさんに通信魔法。
特に変わりは……ん、あった?
あったけど鎮静した?
暴動と鎮圧?
キャスティーナさんが派兵して。
ん、え、どうする。
聞いていたアンヌも目をぱちくり。
沈静したなら……いや。
不安なまま子供達を出せんか。
アンヌと姉さんでトゥルチャだ。
安全を確認して下さい。
俺がエルゼも纏めて拾って来る。
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