黒鷲の旅団
31日目(6)送迎ぐるぐる

「おし。じゃあ、確かに預かる」
「剣も教えとくー?」
「まず経理ですよ」

 よろしく頼みます。
 まあ、どうしても合わなかったら。
 通信魔法ででも連絡をください。

 ポータルでトランシルヴァニアへ。
 ブラショヴでキース少年を見送った。
 ドゥムブラヴィツァ。黒獅子隊。
 代官になったヴァルター隊長達。
 スカウトされたキースは経理手伝いへ。

「「よよよろしくお願いします」」

 ドモりまでハモった。
 キースと入れ替わりにエルゼ。
 騎士の娘エルゼ・ディンドルフ。
 今日から黒鷲団で修業します。
 難しい時勢だが、よろしく。

 先に手紙をくれていたエルゼ。
 父親は武者修行自体を嫌がって。
 野良修行よりはうちがマシだと。
 シャルロッテからの紹介状付き。
 貸しを作る意味で俺はこれを請けた。
 知ってる顔が賊に襲われてもな。

 エルゼを連れてブカレストへ。
 フリス隊に復帰希望のドルセア。
 欠損持ちで求職中のマリレナ。
 ここで合流して装備を集めに行く。
 あとティモ、ヒューゴ、ヨティス。
 ガイゼル達に合流するのを見送る。

「あ、来た来た」
「こいつこいつ」

 こいつ? おお。
 ガイゼル達が指す掲示板。
 ダニエルの手配書が張られている。
 今朝、憲兵隊が持って来たらしい。

 祖父の伯爵がダニエルを庇ってる。
 大人しく捕まるとも限らんが。
 少なくとも大手を振って出歩けまい。
 出くわす確率が減るのは嬉しい。
 追い詰まってる怖さもあるけれども。

「イケドリって?」
「殺したら賞金出ないんだと」
「ちぇー」
「金いいから殺っちまわね?」

 物騒な事を言うのはティモ。
 こらこら、後が面倒になるから。

 さて、無等級でも冒険者。
 子供がなるには大人の申請が要る。
 一応でも俺が後見人として申請。
 女将と面談。書類に記入して……

 記入項目に住所。住所か。
 何かあった時の連絡先。
 俺の家、ポータルの中はダメらしい。
 ここで頼める? お願いします。
 伝言やらは女将が預かってくれる事に。

 女将が申請を受領。
 無等級の冒険者認定証を得る。
 これをティモ達3人に渡して。
 再編、ガイゼルチーム。

 リーダーは剣士ガイゼルから。
 重戦士トリット。
 斥候ジノ。司祭ラーナ。
 魔女ベデリアとサスキア。
 魔法剣士ジェイン。
 魔法弓士ペネロペ。
 あと神人で元傭兵のランカーさん。

 ここにティモ、ヒューゴ、ヨティス。
 3人とも元弓兵。
 後衛が少し過剰だろうか。
 まあ、前後に並ぶと強いのか。

「よし、じゃあ、そこら辺から」
「ダンジョンはー?」
「君達の腕前を見てからだ」
「結構デキるんだろ?」
「へへっ、まあねー」

 煽てて誘導する大人達が優しい。
 引き続き堅実にお願いします。

「もう決めたか?」

 ふと斥候役のジノが戻って来て。
 決めたとは方針。フィールドへ。
 彼はうんうんと頷いて。
 何かあったのか?

 状況。冒険者ギルド。
 表に貴族の馬車が複数。
 相当数の私兵を連れて来ている様子。
 あまりギルドに近付きたくない感。

 貴族。どこのだろう。
 ジノが馬車の紋章を書いてくれる。

 これは……ガーランドかな。
 翼獅子の紋章を基調として。
 ダニエル父のそれより豪華。
 多分ダニエル祖父側。
 早速ギルドに圧力を掛けに来たか。

 顔見せは後にした方が良い。
 変に関わって捕まってもな。
 頷くガイゼル隊。
 お互い注意を促して解散。

 ……探知、看破魔法。
 音紋解析魔法。空間把握、解析。
 周囲にダニエルは居ないな。

 通信。アンヌ。トゥルチャの方は。

 農民反乱が起きていたという。
 レイニさんの村ではなく。
 別の村が襲って来て?
 キャスティーナさんらが鎮圧、撃退。
 全滅には至らず残党捜索中。

 襲われた側も気が立っている様だ。
 報復を口にする者も出ている様子。

 宥めておいた方が良いだろうか。
 アンヌ、交代出来るか。
 新人の引率を頼みたい。



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