黒鷲の旅団
31日目(14)魔女が火炙りにする件

『魔王軍などと轡を並べるなど。
 んん? そうではないのか』

 ないですよ。配置、配置。

 トゥルチャの開拓村奪還作戦を開始。
 まずは神聖教会勢力。
 魔王軍との協力に反発する。
 そんな事は想定内だ。
 他方面に配置している。

 神聖教会は西から村人を護送。
 占領している部隊を問い詰める。
 教会の旗を掲げて村を襲った。
 これはどういう了見か。
 いきなり撃って来る事もあるまい。
 まずは言い分を聞いてやる。

 その間に魔王軍のお二方。
 大ガーランド領を焼き討ちする。
 ちょい東。コンスタンツァ側。
 案外、ご近所だったな。

 襲撃。目的は増援の阻止だが。
 名目は、流入した麦角菌の処理。

 当該地区に麦角菌が流入した。
 流入のルートが魔王軍と発覚。
 責任を取って麦角を焼き払う。
 この筋書きで公主の公認を取った。

 気の利いた書状も送って貰った。
 内容はただ一言。
 文句があるなら王城に出頭せよ。
 内乱誘致の申し開きもあろう。
 どの道、出て来て貰わないと。

 スキルポイントからレベル上げ。
 拡声魔法を伝授可能にした。
 魔人姉妹に伝授する。

 まずは通知。
 通知の上、魔王軍の焼き討ちを開始。
 これに合わせて魔女協会チーム。
 トゥルチャ側でも畑を焼く。
 元々、刈ったら焼く予定だった。
 疫病を広める気は無いアピール。

 焼却は上級魔女達が指揮を執る。
 延焼の防止は各大魔女が統率する。
 豪雨魔法など揃えてくれている。

 ここまでで各隊、何か質問は。
 挙手はマトゥーシュ君。
 ちょい遠いので通信をくれ。

『汚染小麦を食べてる奴らは?
 他に食う物が無い奴らが居るよ。
 危険だって、お触れが出て。
 それでも麦が高くなってて。
 貧しい奴らは汚染麦でも食ってる』

 不足する食糧は他国から買い付ける。
 責任は公主が取ると言っている。
 だから今は麦を焼く。
 終わったらまた炊き出しだ。

 黙っていても汚染は拡大する。
 汚染小麦からの健康被害も。
 強制執行的にでも処置しなければ。
 勿体無いと言ってる場合じゃない。

『接触に際して、だけれども。
 抵抗するなら殺してしまっても?』

 魔人ジェニフェレーヌから。
 兵とか近隣住人ですか。

 まず抵抗するなら殺すと警告して。
 それで掛かって来るなら仕方ない。
 奴らは無言で撃って来た。
 それに比べれば良心的でしょう。

『ふ。良心的な魔王軍だと。
 今は乗ってあげましょう』

『大丈夫。死んでも元通りですわ』

 ブランさん。
 それアンデッドにする奴だろ。
 せめて選ばせてあげてね……

『うちらはー?』

 イェンナ。うちの子は巡回。
 大魔女達に協力して延焼を防ぐ。

 引率は大魔女フリアリーゼさん。
 ジュス姉さんとハンナも頼りにする。
 村の顛末も気になるとは思うが。
 これは通信魔法で共有する。

 自領と周辺に火の手が上がり。
 さて、占領軍はどう動くか。
 村から釣り出せれば良し。
 出て来なければ次の策。

 いずれにせよ、村から誘き出して。
 俺とアンヌ、クリムさん。
 骸骨騎士団とケンタウロス隊。
 戦車部隊を襲撃する。

『何で俺まで』

 クリムさん不満げ。
 まあ、姉さんへの土産と思えば。

『おうよ、任せなー』

 手の平ころりん。
 分かり易いって良いなあ。

『この村は魔女の手下だ。
 焼き討ちせよとの命を受けている。
 神の意思にも沿う行いである』

『教会を差し置いて神意を騙るか。
 この者達は教会の庇護下にある。
 手出しする事は罷りならん』

 フレスさんの通信中継。
 占領軍と異端審問官。
 教会側が村に到着したか。

 敵の気が散った方が楽だろう。
 こちらも行動開始を急ごう。

 歴史上、何かと魔女ばかり火炙りに。
 たまには魔女から火で炙ってやらんとだ。



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