黒鷲の旅団
31日目(21)裏工作カウンター

「待て! 待て、話せば分かる!」
「そうだぜー。話をしよう]
「さっさとゲロっちまいなー」
「待て! 待っ、熱! 熱っ!」

 トゥルチャ開拓地、村長宅。
 椅子に縛られた兵士が喚く。
 これを責める神殿騎士デフロット。
 赤々と焼けた鉄串で兵士をつつく。
 脇で見ているのはアリスマリス。
 手には大きなペンチみたいな物。
 早速、手荒にやってんな……

 ガーランド配下の農村占領軍は解放。
 名目上、解放したのだが。
 ここから何人か抜擢した。
 個々人を村に招いて話を聞いている。

 聞きたい話は色々ある。
 大ガーランド伯爵配下の農村襲撃。
 伯爵糾弾に繋がるネタは無いか。
 あと、教会に泥を塗った了見とか。

 教会側から見て大ガーランド。
 自分都合で神意を捻じ曲げた。
 教会の旗を立てて村を襲った。
 これは罪の擦り付けだ。
 意趣返ししたい。

 お招きした兵士達。
 こいつらは不運か因果応報か。
 丁重に持て成されている。
 その内訳は多種多様だ。

 部隊長。ガーランドの忠臣。
 手柄に目が眩んだ昇進希望。
 借金を抱えたお調子者、等々。
 ガーランド寄りの奴は特別待遇だ。
 審問官お得意の尋問会。

 この、実質捕らえられた兵士達。
 連中は帰還しなくても何も言われない。
 変身魔法で魔女が入れ替わっている。
 潜入調査作戦が同時進行中。

 悪知恵が働く物だと感心する。
 公主から教会への要望書。
 ガーランド配下の部隊は開放。
 併せて疫病拡大の原因を解明せよ。
 個々人への聴取は阻まないとする。
 手段については一任する等々。

 バレた時の為の保険だ。
 記録上、占領部隊は解放して。
 実際はしっかり捕まえている。
 バレなければ、は考えが甘い。
 向こうもどんな諜報をやるか。

「どうしてくれるんだ」
「折角建てたってのに」
「怖かったんだからね」
「そうだそうだー」

 村長宅の外、村人達。
 相手は特別待遇でない奴らか。

 嫌々付いて来た様な連中。
 冴えない下っ端兵士2人。
 敬虔な神聖教会信者。
 妻子持ちの中年男性、等々。

 こいつらには村人のクレーム攻撃。
 畑や家屋に戦車で攻撃された。
 死者を出していた可能性もあった。
 非難の声が凄まじい。

 あまりヒートアップしても、かな。
 村人が暴行に走らない様に。
 しかし、見ると公主の姿も。
 そうだそうだと煽っている。
 完全にお調子者の顔だ。

 ちなみに兵士の内訳は読心魔法から。
 使い手は熟練者のレイヴン婆さん。
 しっかり連携している魔女と教会。
 共通の敵が居ると纏まり易い物だが。
 後に向けた根回しも必要だろうか。

 ともあれ、村長宅を出る。
 公主に少し釘を刺したい。

「あ、お兄さん」
「こここんばんは」

 屋敷を出た所にユッタと。
 教会の子か。3人。
 アウローラさん付き元奴隷階級。
 ジャンパオロ、コンツェッタ。
 あとデリツィアだったか。

 シスターローラを探しに?
 まあまあ遅い時間だ。
 心配でもしただろうか。

 振り返ると屋内のアウローラさん。
 気付いてこちらに向かって来る。

「あとね、これ。
 公主様にって」

 ユッタの手に何かの石。
 宝石の様だが魔法アイテムか?
 鑑定。鑑定が弾かれる。
 何だ? これは誰から?

「貴族っぽい人がね。
 公主様に届けてって。
 大事な物だって言って」

 貴族。誰だろう。
 公主には俺から渡しておこう。
 石を受け取りかけて、

「いけない」

 背後でアウローラさんの声。
 え、何が。

 反応した時には遅かった。
 石から光が溢れる。
 何か魔法が発動する。
 発動紋は転移系に見えた。
 爆発とかでないだけマシか?

 そして次に気付いた時、俺は。

「えっ、何」
「ここ、どこ?」

 ……俺達は。
 どこか石造りの建造物の中に居た。



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