黒鷲の旅団
31日目(22)ここはどこだと?

「敵影無し……無しかな」

 俺を振り返り、首を傾げるユッタ。
 うん……俺もそう思うが。
 遮蔽物も多い。
 まだ油断するなよ?

 恐らく魔法アイテムだったのだろう。
 強制的に転送されて。
 俺達の現在地。何だ。
 石造りの建造物の中。
 俺達は四角い部屋の中に居た。

 色々気になる事はあるとして。
 まずは周囲の安全確認だ。

 確認。覗き込んだりしない。
 遠見魔法で柱の影を見る。
 音響、音紋解析魔法。
 俺達以外に物音を立てる物はない。

 敵影無し……無しかな。
 ひとまずは安全と見て、分析。

 部屋は10m四方といった所か。
 室内に石の柱が4本。軽く邪魔。

 外周の壁、四面に各1つ。
 松明らしい物が燃えている。
 炎が青いのが怪しげ。
 魔法かな。霊魂ではあるまい。
 あるまいが、魔法世界だからなあ……

「……えっと」

 ユッタが武器を取り出す。
 唯人だ。装備枠ウインドウは無い。
 物品転移魔法コールストレージ。
 狙撃銃はPGWティンバーウルフ。
 銃がユッタの手に収まる。

 ……転移魔法が通る、か。
 ユッタ、帰還スクロールは。

 そうだったとユッタ。
 上着の内ポケットから巻物。
 せーのでリターンの魔法を呼ぶ。
 呼ぶが……効果が無い。

 俺からも転移魔法を試す。
 転送、ポケットのゴミくず。
 転送のセンドストレージは通る。

 コール、馬。
 馬は呼び出せない。
 生き物の転移が通らない?
 コールストレージ、ジャガイモ。
 イモは来た。物品扱いか?

 どこかに飛ばされて。
 魔法で帰れない。どうしたものか。
 思案していると通信が来た。

『あんた達、無事!?』

 イーディス公主だった。
 幸い無事だ。というか。
 通信が通るのがまた幸いだな。

 何が起きたか分かるか?

『残骸を見たわ。石。やられた。
 これ強制ポータルじゃん』
 
 通信の先。憤慨している公主。
 映像もくれている。
 手には砕けた石の欠片。
 使い捨ての魔法アイテムだった。

 強制ポータル。
 強制的な転移アイテムだろう。
 危うく公主に届ける所だった。
 代わりに俺達で食らってしまった。

 俺達が居る場所は何だ。
 脱出したいが、出来ない。
 転移魔法が封じられている。
 厳密には人体の転送か。

 公主はダンジョンだろうと言う。
 転移が出来ない、からの推測。
 ダンジョン。出口は必ずある物か?

『ダンジョン……えっと?
 クリエイト系、ダンジョン……』

 神人マニュアルを確認する公主。
 ダンジョン生成は詳しくはない様だ?

『攻略はともかく作るのはね。
 っとー、あったあった。
 出口無しは作成不能みたい。
 戦神と遊戯神の加護で何とかって。
 でも、どんなダンジョンか」

 どんな……何か、石造りの。

『でなくて、コンセプトの話よ。
 転移もあたしが標的で。
 敵の狙いは多分、足止め。
 どう足止めすると思う?
 あたしに太刀打ち出来る相手?
 そうそう用意出来ないハズよ』

 本当に用意してたらヤバいけれども。
 出来ないとして……どうなる。

『だから多分、長く掛かる奴。
 迷路とか、謎解き重視とか?』

 それは面倒臭いな。
 脱出に時間が掛かるダンジョンだと。
 強者でも長期戦になる迷宮。

 加えて、手勢。戦力……戦力か?
 強制転送に巻き込まれたメンバー。

 俺、ユッタ、は、まだ良いとして。
 教会の子、非戦闘員が3。
 これを守りながらだ。
 強行突破というワケにも行くまい。

「私が守りますので。
 どうか見捨てずに」

 アウローラさんも居た。
 何も見捨てやしませんが。

「トゥーリカちゃんも居るよー」

 妖精トゥーリカ。
 上着の胸ポケットに入っていた。
 助かる……助かるけれども。

 トゥーリカを入れても4人。
 4人で3人守りながら。厳しい。
 敵、あんまり居ないと良いなあ。



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