黒鷲の旅団
31日目(24)よい子は寝た頃に

『それじゃあ良い子のみんな。
 また来週〜』

 ん? 何? ……ヨルクか。

 意識を戻して現実世界。自室。
 俺はベッドに身を横たえていた。

 デスクの端末が起動したまま。
 何かの幼児番組が再生されていて。
 デスク前の椅子に義体の子供。
 ヨルクが寝息を立てている。

 マルカ達の村の少年。
 ゲームの魔法世界から魂だけ来た。
 機械の義体を得て2週間程か。
 少し動き回れる様になった様だ。

 デスクの端末はそのままにして。
 携帯端末から検索。
 ダンジョン攻略。何か情報を。

 という所、着信。ままならんな。

 フィルブラント私設部隊に通達。
 ベルベット社から救援要請。
 他社領域でも悪魔が出た様だ。

 ベルベット社。
 イーディスの親兄弟の企業。
 うちと同盟関係には無いハズだが。
 状況が悪いのだろう。
 目下対立中でもなし。
 フィロは派兵を決めたらしい。

 出撃メンバーは既に選出されており。
 俺は……入ってないな。
 代わりに本社防衛任務が課せられた。

 陽動と見た、かなあ。

 お隣さんで悪魔騒ぎ。
 騒ぎに乗じて捕虜救出作戦。
 ありそうな話だ。

 捕虜。先日の悪魔召喚男。
 こいつの通信先を探っている。
 関係者の身柄は抑えられず。
 しかし端末が幾つか見つかっている。
 技術部が解析中。
 手掛かりが出て来るかも知れん。

 ともすれば、救出目的ではないか?
 端末の回収が主要かも知れん。
 捕虜の方は口封じされるか。
 どの道、捕虜も守るしかあるまいが。

 この、敵方の陽動に対して。
 こちらは派兵して見せる。
 策に嵌ったと思わせる。
 のこのこやって来た奴らを叩く。

 事実、派兵部隊のメンバー。
 俺以外にも主力が外されている。
 入ってるのはグラディスか。
 イーディス嬢らの安全確保役。

 企業は仲良しともいかないが。
 フィロとイーディスは友達だ。
 向こうは向こうで護衛も居ろう。
 企業的には迷惑になるかも知れんが。
 何かしてやりたい所だろう。

 さて、居残り組は警備だ。
 グレッグは既に配置済みか。
 捕虜の独房前に向かっている。

 バリーやバルディが屋外巡回。
 ヴィルは屋上に向かった。
 サナトス、ガードメカを展開中。
 各チームに援護を送っている。

 俺はどこに向かうか。
 グレッグが抜かれるとも思えん。
 そうなると端末か。
 まだ技術部で解析しているかな。

 部屋を出る。
 出て、咄嗟に身を引いた。
 鼻先を掠め刃が煌めく。

 刺客。入り込まれて。
 標的は俺? いやヨルクか。
 異世界からの来訪者。
 どこで情報が漏れた。

 下がりつつ突きを払う。
 拳銃。バースト撃ち。
 衝撃が相手を揺さぶる。
 しかし止まらない。

 組み付こうとして来る。
 動作がおかしい。
 蹴り飛ばして手榴弾を放る。
 ドアに飛び込んで閉める。

 爆発。ドアが歪んだか。
 蹴り開けて外を見る。
 相手はバラバラだった。
 手榴弾1つの効果に見えない。
 自身も爆発物を持っていたか。

 腐臭が酷い。
 リモート死体だろう。
 脳だけ入れ替えた死体。
 遠隔操作の使い捨て。
 伯竜公司の暗部辺りか。

 サナトスに通信。
 1人、1体か。仕留めたぞ。
 応援を回してくれ。

 入り込まれてる。
 警備体制に穴は無いか。

 あと……どこから情報が漏れた。
 これも調べなきゃならんな。

 ブレイスフォード社と伯竜公司。
 手を組んでいるのか、偶々か……



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