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黒鷲の旅団
32日目(3)ダメだた、おはよう
『あー、えと……おはよう』
少しテンション低めのマリナ。
起きたら俺が戻ってないか。
そんな期待があっただろうか。
すまん、おはよう。戻れんかった。
俺達はまだダンジョンの中だ。
午前7時少し前。
屋敷の方は朝食の支度時。
ダンジョン組は緊張状態。
既に活動を開始した。
部屋に立て籠もって休憩中。
シチューを貰えるかな。
帰る力をつけないと。
頷くマリナ。転移魔法。
シチュー入りの器を転送してくれる。
物品が通るだけ良かった。
『あう、ダメだたか』
屋敷の厨房には花人達の姿も。
食材を納品していたのだろう。
ダメだたよアンゼさん。
俺まで釣られて片言になった。
食事の支度はマリナと花人隊。
あと、ペトリナ、マイナさん……
トゥリンは見てるだけか?
調理には参加しない様子。
出来たら呼びに行く係?
甘藷を茹でるツェンタ。
1つだけ。自分用か。
隣で薬草を煮込むサンドラ。
2人してぐふぐふ言っている。
自由だな、お前ちゃんらは。
と、通信しているのを察知したのか。
厨房にアンヌが駆け込んで来る。
『お兄、お兄!
アウローラとエッチぃ事した?』
『ぶーっ!』
最初に聞く事がそれかよ。
聞いていたマリナがブーッと吹いた。
無い無い。何もしてません。
『えー、まさかユッタと』
「ぶー!」
今度はユッタが吹いた。
マリナがお玉を取り落とす。
サンドラ達が寄って来てしまう。
何も無いから。まったく。
『あら、そう?
冒険者だとそういうのも居るって。
野営とかダンジョンで興奮する奴』
創作の中だけではないのかね。
変に羽目を外す奴ら。
非日常感に舞い上がるのか。
それとも世間の目が無いせいか。
しかしダンジョン内。敵地だろう。
安全なベースキャンプではない。
男女で盛り上がってる場合じゃない。
どこから襲われるか分からん。
魔物であれ、野盗であれ。
襲われても死なない自信があるか。
でなければ、いつ死ぬか分からん奴。
今日明日にも死ぬ。
だから、思い残す事が無い様にとか。
何か刹那的な価値観なのだろう。
後先考えないから死ぬ。
どうせ死ぬから後先考えない。
悪循環だとは思うがな。
俺は必ず帰る。
ユッタを生かして帰す。
今はそれが最優先だ。
余計な事を考えている場合じゃない。
今日の方針。
俺はダンジョンの中だ。
脱出まで時間が掛かるだろう。
ユッタ以外、屋敷に残る子供達。
付き添って歩く事ができない。
子供達を束縛したくはないが。
しかし安全な社会でもない。
悪い冒険者、異世界勇者。
ロクでもないのがウロウロしている。
子供が出掛けるなら付き添いは要る。
アンヌが挙手。頼めるか。
ジュス姉さんらにも応援を頼もう。
『こっちから何か出来ないかな』
マリナ、それは俺達にか。
外部からダンジョン側に手助け。
そうだなあ。物品の転送は通る様だ。
物資を放り込んで貰うとか。
後は……ふと、サンドラちゃん。
羊皮紙に地図を転写しているが。
その地図は俺の見ている物だ。
脳内地図。空間魔法、空間把握。
マップや探知情報が共有されている?
何かやり様があるかな。
食事が済んだらまた通信しよう。
魔女さんらにも相談したいし。
今から起きて来る子も居るだろう。
俺達は先に腹ごしらえ。
ユッタにシチューの器を回す。
と、デリツィアと目が合った。
俺の分を先に渡そうか。
元奴隷階級、教会孤児院3人組。
オドオドしがちなジャンパオロ少年。
少しお姉さんぶったコンツェッタ。
小さいのがデリツィア。
デリツィアが一番遠慮無いな。
小さい分、順応が早いんだろうか。
お前ちゃんらも食べなさい。
戦えなくとも歩いて貰う。
担がずに済む方が良い。
ユッタと、お前ちゃんら。
何とか無事に帰してやらないと。
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