黒鷲の旅団
４日目（２）盗賊少女救出作戦
〜裏からウラウラ〜

　イェンナとフェドラに緊急事態発生。
　盗賊に捕まって……違う。
　盗賊と一緒に捕まりそうだ？

　ローレンシアにも伝令役から報告。
　こりゃあ、何かあったな。
　呼び止めて状況を聞く。

　曰く、近隣に盗賊団が居て。
　タチの悪い傭兵と組んだらしい。

　これを危険視した騎士団。
　討伐作戦を行う。
　憲兵や冒険者を集めている。
　奴らのアジトに攻め込むのだと。

　ここにマリナの情報を足す。
　イェンナは盗賊団の下っ端だ。
　このままでは討伐に巻き込まれる。

「朝早く、足抜けするって言いに行ったの。
　フェドラちゃんも付き添いで。
　でも、２人とも戻って来なくて」

　足抜け。昨日のモジモジの正体はそれか。
　しかし盗賊団、犯罪者の一党。
　そんなのの顔を幾らも見ているんだ。
　簡単に開放したりもしないか。

　そして、討伐作戦の知らせ。
　居場所を、情報を流したと疑われた？
　だとしたら……

　すぐ向かおう。
　マリナは先に酒場に戻ってくれ。
　サンドラと合流していて。
　ユッタは……姿が見えない？

　ユッタも気になるが……
　まずは盗賊団アジトの前へ。
　騎士団や冒険者達は。
　盗賊アジトを囲むように展開中か。

　騎士団長を見つけた。相談。
　ローレンシアからも聞いていた様だが。
　早々に難しいと言われてしまった。

「従者の子が囚われていると聞いた。
　こちらも最善は尽くすが……
　絶対の約束は出来ない。
　敵方にも神人が居る。侮れん相手の様だ」

　相手は強く悪辣な大集団。
　手を抜ける相手ではない。

　そして乱戦となる。
　巻き添えで皆殺しになる可能性もある。
　事情は分かるが……どうするか。

「あーあー、ヤベェんだー」
「死んだなこりゃあ」

　ヒャッハー冒険者達。ウザい。
　視界の端でゲラゲラ笑ってる。

　なるべく助けるからとガイゼル達。
　気遣いは助かるが。
　なるべくじゃ困るしなぁ……

　騎士団長、作戦開始は。
　正午か。分かった。

　索敵、外周から敵の様子を探る。
　ふと、高台に青マーク。
　味方？　ユッタか。
　時計塔から身を乗り出し銃を構えていた。

「わ、私が……早く何とか、しないと」

　駆け付けてみると、緊張した面持ちで。
　スコープを覗くユッタ。
　視線の先には、縛られたイェンナ達。

　ユッタは手が震えていた。
　震える手を何度も自分で叩く。
　止めようと。必死な顔。
　照準を付けられずに居る。

「あ、あっ、わあっ、お兄さん！
　イェンナちゃん、フェドラちゃんが！」

　泣きそうな声。落ち着いて。
　良い場所を見つけたと言いたいが。
　ここから撃っても脱出支援は難しいだろう。

　見た所、人質になっている。
　すぐに命も取られまい。
　裏口から潜入して助け出そう。

　裏手へ回りつつ、サンドラに通信魔法。
　マリナ、サンドラ、ハミルトンと合流。

「ユッタの友達じゃあ、放っておけんしな」

　爺さんの手にはウォーハンマー。
　騎士団の動きには気付いていた様だ。
　酒場に様子を見に来てマリナから聞いた。
　大人の手があるのは有難い。

　マリナも行く気になっている？
　ユッタにしても。
　来るなと言っても聞かないだろう。
　退路の確保、後方確認。
　人手があっても良いだろうか。

　他には？
　グレッグ達は別件で忙しい模様。
　フレスさん達は……正面。
　騎士団の協力要請に応じる所か。
　時間が無い。俺達でやらないと。

　騎士団の作戦開始は正午。
　正午より前に支度を済ませる。
　先に攻め込まなければ。

　騎士団の盗賊討伐大作戦と並行して。
　俺達は盗賊娘救出大作戦を実行する。

　午前11時20分。盗賊アジトの裏側へ。

　探知、空間魔法。室内の敵配置を確認。
　どうやら内部は敵だけ。
　人質が居ないなら容赦はしない。
　解錠魔法。マリナはドア開け。
　ユッタは周辺警戒を頼む。

　ドアを開けて。
　閃光魔法フラッシュボム。怯ませる。
　連続で毒魔法ポイズンボムをぶち込む。
　すぐに閉めて施錠魔法。
　毒で苦しんでか、ドアを叩く音。

　叩く音……が、聞こえなくなる。
　再び探知、空間……よし。死んだ。
　解錠魔法。解毒ばら撒いて、次だ。

　えげつねぇなと爺さんだが。
　こっちは寡兵。仕方なし。
　マリナ、なむなむは帰りにしよう。

　同じ要領で、もう２部屋制圧。
　何度も増改築された砦の様な建物だ。
　部屋数、敵の数も多い。
　盗賊娘達になかなか近付けない。

　と、流石に警戒され始めたかな。
　探知結果４部屋目。
　ドアの前にバリケードの様相。

　ドアじゃない所を通ろうか。
　空間解析、薄い所を選定。
　刀で壁を丸く斬る。
　刀を手放し飛び込んで。
　２丁拳銃で横から排除。

　午前11時40分を回った。
　あと20分……も、当てにならんか。
　急げるだけ急ごう。