黒鷲の旅団
4日目(3)盗賊少女救出作戦〜混戦模様〜

「騎士ども、よく聞けぇー!」

 盗賊団アジト中庭部分を移動中。
 盗賊の方に動きがあった。
 縛られた子供が担がれている。
 高台へと運ばれて行く。

「それ以上は動くな!
 このガキ共が、ど」

 まで言った所で。
 狙撃。狙撃。ユッタも狙撃。
 盗賊の死体と子供が1人落ちて来る。
 抱き留めると結構な美少女だが……
 見ない顔だな。イェンナ達と別口。
 上まで上がって残りの子も回収しないと。

「え、え、あ……す、素敵な方……!?」
「むぅー! こっち来るのー!」

 戸惑う美少女さんを引っ張るサンドラ。
 そのまま子供達と、後ろの部屋まで頼む。

 今の攻撃で敵には気付かれたハズだ。
 突入は俺と爺さん、トゥーリカで行く。
 閉所だ。頼るぞ妖精ちゃん。

「お、おっちゃん……!?」
「わぁー、来てくれたんだー」

 俺と爺さんで高台に強行突入。
 残っていたのは2人。
 やはりイェンナとフェドラだった。
 安心するには早いぞ。囲まれつつある。

 爺さんが剛腕で2人抱えてくれる。
 なら突破口は俺が開く。
 閉所で銃では跳弾が怖い。
 剣と魔法で押し通る。

 軽装の盗賊。長槍の連撃で突き倒す。

 厚い皮鎧の奴に突きは徹り難い。
 鎧の隙間を短剣で狙う。

 槍使い。リーチが邪魔。
 手斧を投げつけて頭を割る。

 複数人、皮盾で押し込んで来る。
 両手剣では狭い。閃光魔法で阻害。
 片手半剣、諸手打ちで断つ。

 くそう、忙しい。息切れに活力魔法。
 度々刃が掠める。出血に治癒魔法。

 今度は魔力が切れそうだ?
 魔力の薬を1本かっ食らう。
 合間にトゥーリカが神経魔法で阻害。

 次、手練れの鎧甲冑。騎士崩れか盗品か。
 プレートメイルにホーバークの重装備。
 剣に魔法付与、雷……案の定、感電した。

 次々に斬り結んでいく。
 と、側面のドアが解放。どっちだ?
 敵か味方かと剣を向け合い……

 あんたか、騎士団長。
 入れ替わりに、互いの前の敵を斬り倒す。

「人質は救出された!
 諸君、存分に戦え!」

 子供達を担いだハミルトンを見るや。
 騎士団長、早々に事態を理解してくれた。

「やるじゃんか、ルーキー!」
「俺達もやるぜええ!」

 存分に戦ってくれる様だ。
 正面は任せよう。
 俺はサンドラ達と合流。
 裏口から脱出に掛かる。

「イェンナちゃん! フェドラちゃん!」
「ユッタにマリナ!? お前らまで!」

 感動の再会は後だ。速やかに後退。
 殿を務めつつ、子供達に移動を促す。

 と、マズイ。連戦で刀が痛んで来た。
 小部屋に飛び込んで体制を整える。
 主戦場から離れ、敵の数もマバラ。
 戦況が落ち着くまで、ここで持ち堪える。

 呼吸を整え……探知魔法。
 側面方向、誰か戦っている。

 不意に、ガシャン。
 窓を割って飛び込んで来たグレッグ。
 続いてロッシィがハイジャンプで乱入。
 おい、どうした。

 直後、短剣を手に飛び込んで来る男。
 グレッグ横転回避。
 ロッシィが片手剣で反撃。
 受け流され、肩口に一刺しされる。
 俺が治癒魔法で援護。

「さんきゅ! こいつ手強くてさ!」
「レベルの能力補正で、こうも違うとは!」

 後からもう1人、イメルさん。
 相手の素性は?

「奴はラタトスク。
 暗殺教団を足抜けした裏切り者だ。
 神人だろうと、落とし前はつけて貰う!」

 足抜け、落とし前という言葉。
 イェンナが僅かに反応して見えた。
 肩を叩いて落ち着かせる。

「しつけぇんだよ、ババァ!」
「だっ、誰がババアだ! もう許さん!」

 子供達は爺さんに任せて俺も加勢。
 こいつ、グラサン装備がウザいな。
 閃光魔法に寄る阻害が効かない。
 ヒーラー、治癒魔法持ちが俺だけだし……

「わたくしも混ぜて頂けるかしら?」

 不意に、ドズン。
 側面の壁が、黒い球体に抉られた。
 メコメコと欠片を吸い込んで。
 何だ? 重力の魔法?

 現れたのは、片目を隠した金髪の美女。

「ザコが湧いてんじゃねぇ!」
「そっくり返しますわ」

 もう何が何やらだが。
 そっちの金髪美女は味方なのか?



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