黒鷲の旅団
4日目(5)盗賊少女救出作戦
〜帰るまでが何とやら〜
「おじさん、もう良いよ!」
「危ないよ! 逃げてー!」
「もう逃げた方がよろしくてよー!」
……ん? あれ?
金髪さんが子供達と一緒に居る。
置いて来てしまって待っていたんだが。
気が付くと、子供達と一緒に下に居た。
あー……レベル7千だっけ。
大消費の転移魔法も軽々使うのだろう。
心配する必要も無かったか。
……なんか、降り難いな。
「た、助け……げふっごふっ!」
盗賊が数人、階段を駆け上がって来た。
逃げ遅れたか、捨て石にされたか。
丁度良いんだか何なんだか。
命は助けるが投降して貰うぞ。
神経魔法の後、浮遊魔法。
動けない盗賊達を下に落とす。
再度探知、空間魔法……解析。
敵隊のレッド反応含め、反応無し。
手の届く所に生存者は居ない。
それじゃ、俺も降りようか。
「ビックリしましたわ。
諦めて戻ったら居ないんですもの。
傭兵さんは判断早いですものね」
金髪美人さん、にこにこ出迎え。
傭兵だなんて言ったかな。
「どこかで会った事がありまして?
なんて、まるで口説き文句ですかしら」
確かに、どこかで会った気がする。
会った……聞いた声だ。
声は、多分……カサンドル・シュー?
「まあ! うふふ……まあまあまあ♪」
当てられて、嬉しそう。
髪を指でクルクルと。
旧友。カサンドル・シュー。
通称カシューさん。
相変わらず可愛い美人ちゃんだ。
俺の回収した忘れ物、捕縛した盗賊。
こちらは騎士団が回収。
盗賊討伐作戦の参加報酬までくれる。
好き勝手やったのに、何だか悪いな。
「いや、こちらこそ助かった。
盗賊団幹部は取り逃がしてしまった。
アジトを調べようにも、この火災ではな。
手柄の1つも欲しかった所だ」
盗賊をしょっ引いて、騎士達は帰還。
火災は憲兵隊、一般兵卒が対応する様だ。
砦……派手に燃えるな。
火事場泥棒どころじゃない。
盗賊どもの遺品は諦めざるを得ない。
奥に縛られていた2人。
見つけられて本当に良かった。
ぼんやり見ているとイェンナ平伏。
どうした?
「あ、あの、あのっ!
ごごごごめんよう!
こんな事になるなんて!」
派手に燃える砦を見て不安になったか。
お前の落ち度じゃない。気にするな。
ただ、足抜け。どうして急に?
俺と冒険して稼げそうと見たのが1つ。
盗賊の庇護はもう要らない。
高い上納金を納める意味が無い。
切れる物なら手を切ってしまいたい。
もう1つは、俺の従者として。
元盗賊の従者は不名誉ではないかと。
主人の名前に傷を付けたくない、と。
「あたし盗賊で、そのせいで。
おっちゃん嫌われたら嫌だなって。
辞めたら言い訳にならないかなって。
なあ、これからも、一緒に居ていい?」
やっぱり義理堅いな、お前さんは。
勿論だ。当面、俺達の仕事を手伝って貰う。
盗賊改め、銃士見習いイェンナ。
改めて歓迎しよう。
火災の後始末は兵隊達に任せるとして。
東区の酒場に帰る。帰って昼飯だ。
グレッグ達、カシューさんもついて来る。
他の子達もおいで。
お金の無い子は奢ってやる。
話を聞かせてくれ。
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