黒鷲の旅団
4日目(7)ぶらり金策

「金をやったり、気を回したり。
 神人なのに、随分と慈悲深い事だ」

 肩を竦めるイメルさん。
 神人なのに慈悲深い。
 というと、他は酷いのも多いという事だ。
 まぁ、俺はこういう性分なんだよ。

「とても愛おしいですわ♪」

 カシューさん、それは好ましいではなく?
 ないんだ。そう……

 まずは冒険者ギルドへ。

 ロッシィとグレッグ。
 冒険者登録がまだだった。

 合流を急いだ為かな。
 あれこれすっぽ抜けているらしい。
 本業だけでも良いが、とグレッグが言う。
 暗殺者には表の顔も必要だとイメルさん。

 そう言えばロッシィ。
 サナトスはどうした?

 この地を任されている公主様が知り合い。
 城に呼ばれているのだとか。
 会うとビックリするよと言って。
 誰だかは教えてくれない。

「よう、死体漁り。今度は配達かぁ?
 地味な仕事ばっかだな。ええ、おいぃ」

 ギルドへ到着。
 また絡んで来るヒャッハーな冒険者達。
 名前はダニエルというらしい。
 何というか、暇なんだろうかな、コイツ。

「ぶはっ、何あれ。
 モヒカン。ウケる」

 指差して笑い返すロッシィ。
 睨まれるが、グレッグとイメルが睨み返す。

 加えて……カシューさん。
 無言の笑顔が怖いんだが。

 大気がビリビリ震えてるのは何?
 威圧スキル?
 ダニエル達も察したのか、狼狽えている。
 ケンカ買わない。
 金にならんトラブルは止めなさい。

「え、あれ、おっちゃんじゃん」

「な、何か怖い気配したけど。
 何? だいじょぶ?」

 イェンナとティルア。
 カシューさん、口の前に人差し指を立てる。
 あんた熟練者なんだから自重しなさいな。

 友達マルカは、まだ見つからない?
 まあ、首都って広いからな。
 夕食には一度戻りなさい。
 焦らず腰を据えて探そう。

 グレッグとイメルは後の仕事も控えている。
 手分けしつつ、配達の依頼を済ませよう。

 カシューさんは……と、ここで離脱。
 ギルド支部長や冒険者達に話がある様だ。
 初心者の成長を妨げても悪いので、とも。
 夕食には同席したいというので、後でまた。

 配達、届け物、人探し……
 やっぱり儲からない感。
 とは言え、今日は出ないと子供達に言った。
 出ようとするとついて来て。
 出るのは、しかし無理だ。

 ロッシィ、グレッグはこの街に来たばかり。
 街を見たいだろう。無理に拘束も出来ない。
 一通りの配達を済ませたら解散とする。

 ……解散とした、が、どうするか。

 鍛冶屋でバイトでも、と。
 ハミルトンの店へ足を運ぶ。
 ハミルトンとユッタ、少々困り顔。
 どうした。鉱物が足りない?
 武具の修繕の材料か。

 錬成魔法を試す。
 鉄くずが幾らかと、鉄鉱石を生成。
 これは使えるか?

 幾らかはそのまま提供した。
 残りは精錬作業。
 炉を借り、インゴットに整える。
 買い取って貰う。

 ハミルトンは鉄くずを煮溶かしている。
 鉄を抽出する様だ。

 ハミルトンの技術を見学しつつ。
 インゴットの作成、納品。
 まずまず高額になったが、良いのか?

「構うこたねぇ。
 ユッタが世話になってんだ。
 兵隊達に吹っ掛けて元を取れるしな」

 商売人としても老練だったか。

 勉強までさせて貰っておいて。
 貰いっぱなしも何だか悪いな。
 俺の武器も幾つか傷んでいる。
 金払って修繕を依頼。

 鍛冶屋を出て。
 まだ夕食まで時間がある。
 大魔女様の通門証を思い出した。
 魔女協会へ足を向ける。

 途中、マリナ、カリマとすれ違った。
 友人マルカは、まだ見つからんか。

 戦争に巻き込まれていなければ良いが。
 と、言った所で心配になるだけだ。
 口には出すまいが。

 俺も気に掛けておこう。
 人相は……長く赤い髪。
 頭に小さな角がある?
 何かの亜人種だろうかな。

「え、あ、えと……
 そ、そんな感じ! です!」

 種族について、カリマは明言を避ける。
 言い難い類だろうか。
 フェドラみたいに半魔だとか。
 俺はそんな所で差別したりしないんだが。
 まあ、見掛けたら連れて来よう。



前へ黒鷲の旅団トップへ次へ