黒鷲の旅団
4日目(8)魔法界の暗部

「ようこそ、魔女の図書館へ♪」
「キミが来るのを待っていたよ」

 出迎えたヘリヤとシャンタル。
 その怪しげな笑みを訝しみつつ。
 俺は魔女の図書館へ足を踏み入れる。

 蔵書は膨大だが、探知魔法で簡易検索。
 有用な資料をカーソルが示してくれる。
 薄暗い内部には照明魔法。
 空間魔法も併用して探ろう。

 1冊手に取って……やっぱり、味気無いな。
 神人が書籍を開くと、仕様なのか。
 内容がつらつらウインドウ表示される。

 脳内コンフィグ機能……
 読書エフェクト……これか。
 開いたページに字が浮かぶ仕様に変えた。

「んふふ、めくるのが好きかね」

 ページをめくっていると、シャンタル。
 神人はページめくらないで人も多いと言う。
 スカートの裾を持ち上げるな。
 そういう話でない。

 閉館の時間を聞き、礼を言って別れる。
 さて、どんな魔法が見つかるか。

『美容と快眠』から。
 精神魔法……は、知ってるが。
 夢操魔法。夢の内容を書き換えるのか。
 調香魔法というのもあるが。
 これは調合の知識も要るかな。

『続・生活と魔法』から、節制魔法。
 これは発動形式か?
 威力を落として発現させる。
 マッチに火をつけるなんてのに役立つ。

 あとは乾燥魔法。
 洗濯の後、乾かすのに使う。
 感電を避ける為、人体以外にも。
 水濡れ状態を解消するのにも使えるだろう。

 しかし洗濯の方を自動化する魔法が無い。
 挿絵、桶と洗濯板で手洗いしている。
 シツコイ汚れは水魔法だけじゃダメか?

『ホウキレースの歴史』より、重力魔法。
 レースの妨害に使用された。
 以降、ルール化され反則になるらしい。
 重力の塊を投げつけ、跳ね飛ばす。
 カシューさんも使っていた奴か。
 発動紋を見落とすと知覚し難い攻撃魔法。

 なるほど、面白い魔法が次々挙がるのだが。
 もう少し強力な魔法は無いか。
 梯子を下りて下の階へ。
 深い所も探ってみたい。

『報復の魔女』より、疫病の魔法。
 治療には解毒でなく浄化魔法が有効。
 知らずに使われたらヤバいのでは?
 対策を考えるにも、まずは出会わないと。

 呪詛魔法。諸々の機能不全。
 要はパラメータを下げる?

 失血魔法。
 血が止まらなくなる。

 痙攣魔法。
 神経でなく筋肉から異常をきたす。

 昏倒魔法。
 頭に衝撃を与えて気絶を誘う。

 更には悪臭魔法に腐食魔法。
 腹痛、嘔吐、失禁魔法って。

 エグい、エゲツない。
 あの手この手の報復の数々。
 そこに至った経緯は……
 浮気か。浮気じゃ仕方ない。

『戦場魔法拷問史』より。
 自白魔法はベタだが。
 中和魔法ってのは、解毒とは違うのか。

 毒を消す解毒。
 対し、有益でも何でも薄めるのが中和?
 毒や何かの調整にも使ったらしい。
 ジワジワ弱らせる為に。

 他に、恐慌魔法。
 経済でなく恐怖状態の方。

 敏感魔法。
 痛みや何かを感じ易くする。

 痒疹魔法、鈍痛魔法……
 こっちも、あの手この手か。

『魔法犯罪の歴史』から。
 透明魔法は分かり易いか。
 陶酔魔法。多幸状態にする?
 鈍感魔法。敏感魔法の逆だろうか。

 あと、洗脳魔法……って、ナニコレ。
 悪用したらヤバそうなんだが。

 これ、出回っていて大丈夫か?
 談話していた魔女さん達に聞いてみる。

「え、えっ、どうなんだろう」
「ふふん、それは先生が説明しましょー」

 戻って来たシャンタル曰く。
 追跡魔法なる物が存在すると。
 魔法の使用履歴を辿る。
 使い手を暴き出す。そんな魔法。
 悪用したら辿られるワケだ。
 遅かれ早かれ捕まる事になる。

 どれだけ覚えたか?
 25個だったかな。

 目を丸くするシャンタル。
 そんなに使えるかねと。

 幾らあっても困らないさ。
 力の使い方を考える。
 それには、まず力が要る。

「ほほう、感心。勉強熱心。
 少しレッスンしてあげよう」

 本に載らない様な魔法。
 秘伝の魔法などもあると教えてくれる。
 習得するには……伝授?
 レベル30以上の使い手に伝承して貰えと。

 更に、派生・複合魔法。
 既存の魔法を組み合わせるのか。
 新しい魔法を発生させる。
 一度出せたら覚えられる様子。
 探してみなよという。

 まず一例として、水と凍結。
 氷晶魔法なる魔法を見せてくれる。
 これは一般に広く知られている魔法の様だ。
 珍しい魔法は特許も取得できるとか。

 その魔法派生の取っ掛かりとして。
 並列魔法発動。
 2種同時発動形式を教えてくれた。
 連射や速射と組み合わせてみろと。

 大変参考になった。ありがとう。
 っと、鐘が鳴る。閉館時間か?



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