黒鷲の旅団
４日目（12）半吸血鬼防衛作戦
〜正面の大魔女、後方の我ら〜

　冒険者のジェイン、ペネロペが到着。
　ダンピール確認の護衛役か。
　ギルドの役人はどうした？

「そ、それが、その……
　殺されちゃった。あり得る？」

「来る途中で撃たれたんだよ。
　信じらんない」

　状況を続けさせようとしている奴が居る。
　アイテム狙いか、レーネを殺したいのか。

　不意にカシューさんが動いた。
　表に出て、探知魔法。次いで雷撃。
　時計塔上部、城壁の上２か所に着弾。
　ＰＶＰ勝利の表示ウインドウが浮かぶ。
　スナイパーを殺したのか。

　神人は時間経過でも生き返るのだが。
　しかし神人に殺された場合。
　その勝利報酬は応相談となるらしい。
　応相談……半透明、魂みたいな奴が現れた。

「あっれ、何だよ、カシューさんじゃないか」
「あんたが狙う程のレアだったっけ？」

　女銃士フィービィとアルビルダ。
　事情を話す。
　やはり討伐依頼を請けていた様だ。
　じゃあ、ギルドの役人を撃ったのは？
　こいつらじゃないという。

　……あと１人は。

「交渉を放棄。
　お金と所持品を全ドロップ。
　そこまで逃げましたわ。
　どんな思惑があるのかしら」

　追跡魔法は魔法にしか使えないのか？
　その手があったとカシューさん。
　だが……ダメか。
　死ぬ前に主武装を手放したらしい。
　凶器は残っていない。
　もう少し敵の情報が欲しいな。

「情報だね。よいしょ、っと」

　トゥーリカが紙が欲しいという。
　ので、女将が羊皮紙を提供。

　トゥーリカは転写魔法なるものを発動。
　紙に人物像を幾つか焼き付けた。
　記録魔法で覚えてコピー。
　転写魔法でペーストするものらしい。

　で……こいつらが、怪しかった奴ら、か。
　帰り道、俺の頭上から記録した面々。
　バロンさんに見覚えがあり。
　やはり神人らしい。
　大したレベルではなさそうだと言うが……

「正面はわたくしが。
　皆様は側面の守りをお願い致しますわ」

　協力に積極的なカシューさん。
　レベル７千を担ぎ出す。
　相手方にズルとか言われそうだが。
　俺達では上級者に太刀打ちできない。

　本当に上級者が出て来たら。
　カシューさんの他、大魔女。
　魔女協会のレベル３ケタ勢が頼り。
　端役の俺達に出来るのは索敵。
　あとは足止めがせいぜいか。

　女狙撃手２名は味方についた。
　フィービィとアルビルダ。
　カシューさんのフォローに。
　ロッシィはジェイン、ペネロペと組む。
　再び冒険者ギルドへ。

　ドズン！　酒場の正面方向で爆音。
　カシューさんが刺客と衝突した様だ。
　数が多い様で、魔女達が出動。
　先導は大魔女フリアリーゼとフッケバエナ。
　撃ち漏らしを狩りに行く。

　探知魔法、側面方向にも感。
　正面は囮だとか？

　グレッグが北へ。
　サナトスが南へ斥候に出る。
　俺は西側の敵を……ん、姿が見えない？

　空間魔法、解析。ターゲットの情報を。
　方位、識別、名前……
　あとは何だ。座標。高度。

　高度……屋根か！
　奴ら、屋根から来た！

　各自、弾かれた様に飛び上がる。
　ジノとベデリアが２階へ。
　ユッタとイェンナも銃を手に続く。
　俺は外に飛び出し、屋根に人影を見つけた。

　ジノのナイフが煌き、襲撃者と応戦。
　相手は盾持ちの片手剣士。
　レベルだけ見ると少々不利だが。
　ユッタ達の援護射撃に足を止めている。

　俺も援護射撃。
　と、敵２人目の魔法障壁に阻まれる。
　質量があれはどうかと手斧を投擲。
　貫けた。後ろ１人が片足負傷、崩れる。
　気を取られた隙。
　ベデリアの魔法がもう１人を撃墜。

　と、シャンタルが束縛魔法で捕獲。
　殺しても生き返って逃げる。
　なら、無力化した方が確実か。

「ほっほーう、上手いモンだ。
　よ〜し、我輩も参加しよう！」

　サンダーバロン、使うのはボーラか。
　紐の両端に重りをつけた様な奴。
　足元に放る。足を絡める。
　残り１人を行動不能にして、捕獲。

「え、え、ナニコレ！　聞いてねーし！」
「これ、イベント？　イベントなの？」

　捕らえた襲撃犯を縛り上げる。
　事情を聴くと案の定だ。
　依頼を請けた冒険者。
　神人、ブレイドレイドと仲間達。
　レベルは俺達と同じ位か。

　街に入り込んだヴァンパイアを殺害する。
　成功すればレアな装備をゲット。
　写真を見れば子供。
　可哀想とは思ったけれど。
　どうせＮＰＣ、リポップするし……云々。

　何だか聞くに堪えないんだが。
　立場の問題か？
　サンダーバロンも肩を竦める。

「あーあー、これだから……
　カシュー君、戻って来たまえ。
　捕虜を取った。情報を整理したい」

　バロンさんの通信。
　カシューさんに呼び掛ける。
　続いて、どどーん。
　数回爆音がして、静かになった。
　あちらは決着がついたかな……？