黒鷲の旅団
5日目(2)少女冒険者隊、準備中

「おっ、すっかり友達か。
 良いじゃねぇか、賑やかで」

 少し前まで虐められていたユッタ。
 目下、友達急増中。
 歓迎するハミルトン爺さん。
 孫が嬉しそうで嬉しい。

 さて、武器選びだが。

 クロスボウを選ぶレーネ。
 ハンターへの意趣返しなのか?
 ペトリナも同じく。
 なので、弩兵隊(仮)とする。
 リーチと取り回しから、そうだな。
 銃士と弓兵の間に入って貰おう。

 代金は……
 レーネは貰った金から出すと言う。
 それならペトリナにも支度金を10万。

「ここここんなに貰えません!」

「えー、それ言っちゃうと。
 あたしらも返さなきゃだよー」

 ティルアの説得。
 ペトリナが受け取ってくれた。
 まあ、先行投資という奴だ。
 働きで返してくれ。

 ティルアは、と……
 ティルアもクロスボウにする様子。
 弦巻きのハンドルに興味を持った。

 俺もクロスボウを新調。
 戦闘用の物に買い替える。
 指導にも使いたいしな。
 ハンティング用ボウガンでは心許無い。

 カリマの武器は持参した小銃の様子。
 どこかに預けてあった。
 回収して来たらしいのだが。
 それ、パーカッション。先込め式なの?
 スプリングフィールド……1795って。

「と、父様の形見なんです。
 だ、ダメ、ですか?」

 儀礼的な装飾。年代物。
 手放すには惜しい工芸品だが。
 実用性はどうだろうか。

 口径が違う。
 ユッタ達と弾の貸し借りが出来ない。
 装填にも立ち上がる必要があるし……
 ハミルトンも口を挟む。
 貴重だし使わず取っといた方が良いと。

「そ、そですか……あうー……」

 至極残念そうなカリマ。
 父親の銃で活躍する。
 そんな想像していたのだろう。
 ハミルトンが気を利かせてくれる。

「あー、お嬢ちゃんや。
 1日だけ預からせてくれんかな。
 お父ちゃんの模様を付けよう。
 なあに、見るだけさ。
 元の銃を壊したりせんよ」

 ユッタ達と同じウィンチェスター1873。
 これに儀礼用1795と同じ装飾を。
 じゃあ、俺も1丁買おう。
 仕上がるまでカリマに貸す。

 金はそれなりに増えていた。
 昨晩倒した襲撃犯、デュエル報酬。

 今更だが、ユッタ達も支度金、要るか?
 モンスター素材貰ってるから充分だと。
 遠慮しなくて良いんだからな?

 次は仕立屋に向かう。
 ティルアとカリマ。
 ペトリナも靴がサンダルだ。
 走れる靴、丈夫な服を買わないと。

「ふぅ……」

 途中、レーネが少し暑そうだった。
 日差しは強くないのだが。
 半吸血鬼、日光は苦手だろうか。
 何か日除けを……

「お、お帽子、貸す」
「あ、どっ、どうも」

 おっと、先を越された。
 サンドラがレーネに自分の帽子を被せる。
 サンドラちゃん、頭を解放
 帽子の下はクルクル巻き毛。可愛い。
 レーネは美少女魔女風味。ダブル可愛い。

 仕立て屋カーラの店へ。
 まずはレーネの帽子を選ぶ。
 レーネは白い帽子を選ぶ。
 選んで、サンドラに貸した。
 今日一日、交換。
 サンドラちゃんもニヒヒと笑う。

 ティルア、カリマ、ペトリナも靴を。
 自分で買える?
 足りなかったら言ってくれな?

 次はドリスの道具屋へ。
 魔力薬と矢弾の補充。
 多めに買って、保管箱へ転送しておく。

 店を出て……索敵、空間魔法。
 浮かび上がるマーカーを解析。
 怪しいのも居るには居る。
 が、敵意は無い様子。

「ふぇっ、探知?」
「えっ?」

 サンドラとユッタが勘付いた。
 イェンナとトゥーリカも。
 慌てて周辺警戒。

「でも、依頼って?
 取り消されたんじゃあ」

 マリナが不安げに見回している。
 まぁ、用心だ。用心。
 ハンターは来ないと思うけれども
 でも誘拐犯は来るかもしれない。
 お前達、可愛いんだから。
 気を付けないと。

「えっ……え、可愛い?」
「え、えへ、えへへへ……」
「私も? 私もー?」

 じゃれついて来る子供達。
 俺は順繰りに撫で繰り回しつつ。
 暗所を避けて明るい道を行こう。
 街の東門へ。憲兵の脇を通る。
 街の外へ出る。

「こっ、こんちわー」
「どーもー」

 イェンナとフェドラ。
 憲兵らに挨拶を試みるのだが。
 憲兵ディータは仏頂面でスルー。
 しかしベアトリスは無言なりに敬礼。
 何か意識に変化でもあったかな。

 さて、ここからはフィールドだ。
 各自、用心して行くぞ。



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