黒鷲の旅団
5日目(3)少女冒険者隊、縦横無尽

「もくひょー、ほそくっ!」
「右! あっ、左からも来てる!」

 接敵。銃士隊、左。
 撃てという前にパパパン。
 ゴブリンが3体続けて倒れる。

 振り返れば右。
 既に弓兵隊が攻撃を開始。
 弩兵隊は? 弦を巻いている所か。

 目標沈黙。進軍再開。
 索敵、次の目標を捕捉。装填を。
 正面に弩兵隊、斉射。
 シュガガッと太矢が飛ぶ。

 コボルド、1体生き残った。
 弓兵隊で追撃を……

「ふんぬ!」

 何やら可愛い掛け声……レーネ?

 彼女はクロスボウの先を地面に立て。
 その板バネに足を掛けた。
 巻きハンドルを使わない。
 素手で弦を引いてしまう。
 矢を装填、残るコボルドにトドメ。

 弦巻きハンドルの手間を腕力で省く。
 手柄を取られまいと思ったのだろうか。

「こっわ!」
「つ、強いね……」

「えっ、や、やだ。
 怪力じゃないですー!」

 別に隠さなくても。
 美人で強かったら儲け物だぞ?
 と、褒めたら露骨に照れた。
 白い肌が耳まで赤くなる。

「あ、わっ……えっとえっと」

 ああー、ペトリナ。
 無理して真似しなくても。
 今はハンドルを巻け。ハンドルを。
 ティルアは物凄くグルングルン。
 顔が必死。顔は作らなくて良いから。

 頑張る子供達にサンドラの援護。
 俺も頑張らんと獲物が回って来ない。
 弓とか普段使わない魔法も試しつつ。

 重力魔法が使い易い。
 効く効かないが無いのが良い。
 子供らにも付与魔法で効果を回す。

 ショートボウは火力が足りん。
 複数射ではどうか。
 クロスボウの装填はレーネを真似てみる。

 イェンナがハチに刺された。
 治癒、解毒。
 お返しの小範囲毒魔法ポイズンボム。
 ハチがぼとぼと落ちて来る。

 水魔法。水撒いて雷撃は有効だが。
 水撒いて凍結も、範囲限定なら有効。
 有効だが……魔力消費もデカい。
 雷撃の方が簡単かなぁ。

 しかし、子供らと行く。遠射主体。
 近接の練習が後回しになる。
 この際、仕方ないか。
 慣れるまで、ついて回らないと。
 俺自身の鍛錬は別の方法を考える。

 丘を登った所。
 サイクロプス2体に遭遇。

 初見の子達は慄くが。
 一件ドン臭そうなサンドラ先輩。
 怖がらないで向かっていく。
 その姿に勇気付けられたか。
 誰しも身を奮い立たせた。
 トゥーリカも閃光魔法を披露。
 阻害から一気に優位に。

 俺も魔力薬をかっ食らって魔力回復。
 阻害魔法を徹底する。
 ボコれボコれ。経験値を稼げ。

 マリナが鉄矢で目玉を狙う。
 サンドラとトゥーリカが雷撃。
 太矢をガスガス叩き込むレーネ。
 俺も失血魔法で追い打ちする。

 暴れるサイクロ2体。
 神経麻痺、鈍感、陶酔、痙攣魔法。
 右1体を一時放置。
 精神、夢操、昏倒魔法。
 鎮静魔法は敵味方にも。
 慌てているカリマ、ペトリナにも使う。

 合間、寄って来るゴブリン。
 追い散らすイェンナ。
 周囲を良く見ている。偉いぞ。

 ティルアは装填が間に合わないか。
 代わりにフォローに回る。
 矢束を余しているフェドラ。
 ティルアが受け取りマリナに放る。
 そのティルアに、レーネ。
 装填済みのクロスボウを回す。

 1体沈黙して。
 俺も片手間、攻めに加わろう。

 片手で阻害魔法。
 もう片手で近接武器を……
 と、ユッタから警告。
 危ない下がれと言われてしまった。
 射線を塞いでしまったか。すまん。
 遠射総攻撃中に前衛など無用か。

 陣形、両端を前へ。鶴翼陣形。
 残る1体に矢弾の集中攻撃を浴びせる。
 ラスト一撃は、俺のフラメア。
 槍を目玉に投擲して、トドメとした。

「ふーっ、ふーっ……か、勝った……」
「や、やったね……」

 喜びに浸る子供達だが、早い。
 抜き撃ち、ゲットオフショット。
 忍び寄っていたゴブリンを射殺する。

「わっ!」
「え、あ!」
「いつの間に!」

 探知魔法の赤マークが残っていた。
 倒れたゴブリンを見る。
 銃創複数と、矢が2本。
 反応出来たのは、俺とフェドラだけか。

 小ズルい相手だったが。
 フェドラはよく気付いたな。

「えへへ、たまたまだよー」
「わ、私も! 私も気付いた!」

 トゥーリカも気付いたと主張。
 よしよし。次は一手打ってな。
 声を上げるとかでも良い。

 一息ついて、気を引き締め直す。
 用心して進軍再開。
 まだ日は高い。
 もう少ししたら帰還を考えよう。



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