黒鷲の旅団
5日目(4)少女冒険者隊、鳥の如く
「あっ、取られた!」
「へへーん、遅いぞぉ〜?」
子供達が慣れて来たと同時。
少し差が出てきた様にも見える。
先輩チームではユッタとフェドラ。
マリナも精度が高い。
新人ではレーネの撃墜数が群を抜いている。
遅れがちな子の適正も見たい。
ちょっと順番に撃ってみようか。
弩、弓、銃。で、どうだろう。
レーネがヒット、ペトリナ失敗。
ティルア、ヒット。
フェドラがヒットして……おや。
終わってしまった。
人数に対して獲物が少ないか。
あんまり練習にならんかなぁ。
アレやって見せて、とユッタ。
ん? アレってアレか?
拳銃、ゲットオフショット6連撃。
ゴブリンが6体、次々に倒れる。
「いよっ、カッケーぞ!」
「凄いよねぇ〜」
イェンナやフェドラが喝采する。
レーネとペトリナが目を丸くするが。
これを私達でやるのはどうかとユッタ。
横隊を組み、左翼を後ろ、右翼を前へ。
前の人から順番に撃って行く。
これは雁行陣形だな。
ガンコー?と首を傾げるのはマリナ。
鳥さんだよ。
渡り鳥の群れが飛ぶ時の並び方だ。
「鳥さん! な、なんか素敵!」
「私達、今、鳥さんなのですね!」
マリナ、レーネが特に気に入った様だ。
接敵。オーク3体。
分担は右、中、左だ。
分隊毎に分担して狙い撃つ。
倒れない奴にはサンドラの補助。
神経魔法、麻痺を付与だ。
俺がトドメを刺して、行軍再開。
これ、俺の練習にも使えるな?
サンドラ、次は俺が阻害を掛ける。
雷でトドメを。
閃光、神経魔法。昏倒魔法も有用。
幻惑や恐慌、魅了でも動きは鈍るが。
足が止まらんのが少々不安。
重力や昏倒魔法で引っ繰り返した方が早い。
1つ隣の丘まで到着。
カリマやペトリナの息が上がって来た。
ここらで小休止としよう。
「と、と、止まってくれるんだああぁー」
ペトリナ、嬉しそうにへたり込んだ。
他の子は大丈夫か?
大丈夫、と揃って言うのだが。
ユッタが擦りむいている。
治癒、解毒魔法。
どうも俺に気を使っているかな。
言い出さずにいる様な。
調子が悪い子が居たら言ってくれよ?
お互いでも気を配っておくれ。
余裕のある子達も居る。
薬草採取を任せつつ、俺は索敵。
オオカミを狩る。
オオカミ肉をドロップする。
死骸を解体すれば、もう少し取れる。
取れるけれども売却価格は低い。
燻製にして保存食にするか。
サンドラちゃんが火を起こしていた。
鍋で調合の練習をする様子。
端で肉を焙らせて貰う。
ちょっと食べても良いよ。
サンドラちゃん、ヒヒッと笑う。
錬成魔法で塩。
サンドラちゃんがハーブをくれた。
一緒に振る。
火で炙ると良い匂いが……
「すんすん、すんすん」
「それ、何? 何焼いてるの?」
子供達が集まって来てしまった。
分かった分かった。
オヤツタイムにしようか。
「はふはふ」
「あちち」
「んまいんまい」
幸せそうに食べるね、お前達は。
見ていてホッコリしてしまう。
さて、進軍再開。
出発前に、採集した薬草とか預かろう。
持ち切れない物は転移魔法。
保管ボックスのストレージに送る。
他に預かって欲しい物はあるか?
遠慮して顔を見合わせる子供達。
迷惑とか無いから。
転移魔法の練習だよ。
そう言うと、一斉に差し出して来た。
これはお役立ちアピールなのか?
提出されて来るのは各種薬草。
ハーブにキノコ。
あと、盗賊が落とした武器が少々。
イェンナ、それはハチの羽根か。
自分を刺した奴の。
え、これ、持って帰るの?
こんなのやっつけたと自慢したい。
孤児仲間への土産だと。
さて、そろそろ折り返そうという所で。
「あ〜ん、助けて〜!」
「誰かー助けてくださ〜い!」
「ああっ、くそ、4匹とか!」
丘の下からサナトスの一行。
サイクロプスの群れに追われていた。
閃光魔法を連射、サイクロプスを牽制。
サナトス達には鎮静魔法。避難を促しつつ。
神経麻痺、昏倒魔法。
仰向けの一体から平らげるぞ。
サイクロプスが4体……阻害魔法重視。
落ち着いて戦えば、もう俺達の敵じゃない。
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