黒鷲の旅団
5日目(11)魔女の貸本・2
「ママ、今日はお休み?」
「お昼の仕事が増えててねー」
マリナを迎えに来たベラさん。
本日、夜の仕事は休業。
昼の方、針子の仕事が増えたという。
……って、俺達なのか。
旅の装いセット10人分購入。
カーラの店、在庫大量放出。
製品は極力自作するカーラさんだが。
委託する事もあるらしい。
で、製品が不足か。
子供達のは在庫の直しで足りたものの。
帰り掛け、また作らなきゃと言っていた。
仕事とか経済、市民の生活とか。
地味に繋がってるな。
続いてハミルトン、フレスさん達。
ユッタ、サンドラを連れて帰宅。
フレスさん達には、また本を借りた。
残りの子は一部屋にミッチリ。
イェンナ、フェドラ、レーネ。
カリマ、ティルア。
ペトリナも自宅を引き払っている。
4人部屋に6人では狭いだろうか。
ただ、カリマが1人で寝られないという。
ティルアと同じベッドへ。
女将が気を利かせてくれた。
1人自分の部屋へ入れてくれる。
数人が手を上げて。
女将の裁量でイェンナに決定。
懐いている為か気に入られている様だ。
俺はコーヒーを貰って読書に掛かる。
新しい魔法を身につけたい。
1冊目は『魔女と騎士』と。
これは恋愛小説の様だが?
騙されたと思って目を通してみる。
魔女が恋する騎士を助けたい。
陰ながら魔法を使う物語。
恋心には、なかなか気付いて貰えないが。
ん……なるほど、これは使える。
強化、防御、加速、抵抗魔法。
それと反射魔法も取得可能に。
魔女から見たら基礎の魔法らしい。
しかし俺には有難い知識だ。
これを指導書にチョイスする。
なかなかセンスが良い。
読み物としても面白そうだが。
熟読は後にしよう。
お次は『魔女と竜退治』より。
減退や軟化、遅延化の魔法。
障壁魔法は、身体を固くする防御と別。
見えない盾を作り出す。
魔法反射魔法の対物理版らしい。
読み終えて一息。
女将さんにコーヒーのお代わりを貰う。
次は『魔物美女大全』とやら。
数ページめくって、一旦閉じた。
……えーと?
これは部屋に持ち帰って読もう。
いや、トゥーリカが居るんだった。
一旦ストレージに収納。後で考える。
「よっすー。来ちった」
「あはははは。来ちったー。いぇーい」
イーディス公主とロッシィが来店。
顔が赤いのは酒でも飲んでいるのか。
公主さんは未成年だろうに。
いや、ゲーム世界だと成人してる?
顔を見せるのが待てなかったのか。
向こうから来た、お忍び公主。
護衛は騎士ギャレットとローレンシア。
イーディス公主から情勢について。
敵軍から不意の休戦があった。
しかし本日で期限切れ。
明日はまた戦闘がある見込み。
参戦して欲しいと。
ロッシィは料理本を持参。
城暮らしは落ち着かなくて、下町に下宿。
その下宿先の老夫婦?に借りたらしい。
目を通してみて。
料理系のスキルを習得可能にする。
煮込み、炒め物、揚げ物、窯焼き……
なるほど? 面白い。
「そうだ、ハインて料理できるじゃん?」
それは……男女問わず。
普通は1つぐらい出来ると思うんだが。
この女子2人は揃って料理音痴と来た。
何か作ってくれという。
女将に厨房を借りる。
食用油と、ジャガイモ、錬成魔法で塩。
イモを刻んで揚げて……
フライドポテトの出来上がり。
「うんめぇー!
ジャンクフードんめー!」
公主様、大変ハシタなく、おハシャギに。
しかし冒険者や騎士達にも好評な様子。
女将が覚えたいと言うので、少し指導。
「すんすん、すんすん」
「何だ何だ」
「何作ってるのー」
子供達も集まって来てしまった。
お前ら、食べ過ぎるなよー?
「はふっ、はふはふ!」「んまい!」
「イモなのに美味い……何だコレ」
借り物の本を汚したくない。
自室に一時避難。
本を避難させつつ……
トゥーリカは子供達と酒場の方。
後回しにしていた本に目を通す。
残っている『魔物美女大全』なのだが。
女性型モンスター各種解説。
挿絵付きで、挿絵がエロエロしい。
これがどう魔法の指導書になるか。
困った事に、指導書になった。
誘惑、色情、官能、扇情、催淫魔法。
その使い手と出くわす可能性があり。
対策を立てるべく研究する価値はある。
折を見て、ザコ敵にでも試してみよう。
しかし挿絵が……んむう……
「う、うひょー」
「ふほおぉー……」
いつの間に。
背後にロッシィとイーディス。
見してって……
お前ら、これ見るの?
子供らに見せるなよー?
「見て見て、エロ本だぞー!」
「ハインのおじさんが持ってたよー!」
「ええっ、嘘だぁー!」
「ぎゃははは、マジでマジでー?」
あーあー、言ってる傍から……
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