黒鷲の旅団
5日目(13)月下のアルラウネ
門を出て照明魔法を灯火……
と、居るわ居るわ。
そこかしこに蠢く影。
これは退屈し無さそうだ。
近接。まずは馴染んだ片手半剣。
加えて片手剣の二刀。
ゾンビを寸断し、スケルトンを粉砕。
そう鈍っても居ないだろうが。
それでも少し慣らす。
同じ武器を使い続ける。
熟練度ゲージの伸びが鈍って来る。
簡易マニュアルで見たな。
単位時間当たりの成長限界だとか。
武器を切り替えて戦闘を続ける。
次、切断重視。曲刀と刀の二刀。
スケルトンは堅い。
刃こぼれする。
ゾンビのタフさも厄介。
頭を潰しても動いている。
そう言えばと、付与魔法を試す。
刃に炎や神聖魔法を付与。
多少は嫌がられている気がするが。
単に破壊力を増したいならば。
重力魔法付与の方が分かり易いか。
阻害。スケルトンに閃光魔法が効く。
ゾンビには効かない。
視覚で感知していないのか。
逆にスケルトンの視覚って何だ。
目の空洞に揺らめく光。
あれは目玉の役割をしているのか?
悪臭、調香魔法。スケルトンには無効。
ゾンビは動きが変わる。
やはり嗅覚かな。
スケルトンに幻覚魔法は効く。
ゾンビには効かない。
恐慌魔法はどちらにも効く。
昏倒魔法はどちらにも効かない。
こう余裕がある内に試しておかないと。
いざという時に取り違える。
それで子供達に危険が及んでは困る。
もう少し魔法を試す。
炎と神聖魔法では、どちらが効くんだ?
どこにでも使える解析魔法。
戦闘ログを表示、ダメージ値の所を解析。
属性ごとのダメージが表記される。
うーん……
ランダム要素で振れ幅がある様だが。
炎魔法と神聖魔法。
数字では、あまり変わらないのか。
「あ、あうー!」
不意に女の悲鳴と、雷光。
爆発音。何だ?
魔法を使う亡霊共の前に人影。
誰か追い回されている。
放置も出来まいと駆け付けると。
緑と白のドレスを纏った……
違う。これ、外皮だ。
緑掛かった肌。
葉の様な外皮を纏い、頭にも白い花。
女性型モンスター、アルラウネの一種。
男を誘惑するなんて記載もあったが。
亡霊共に魅了が聞くとは思えん。
何だって追い回しているんだか。
アルラウネも警戒しつつ。
まずはアンデッドを倒す。
長弓、神聖魔法付与、遠射。速射。
亡霊共の注意を引いてやる。
アルラウネは逃げて行こうと。
しかし、ふと足?を止めた。
探知魔法のマーカー、黄色。
アルラウネが中立判定になる。
戻って来て……植物の魔法?
ツタや枝を使って攻撃する。
骸骨どもを蹴散らしていく。
どうも、このアルラウネ。
霊体を処理する手段が無かった様だ。
ゾンビやスケルトンは相手出来る。
戦ってくれる。
治癒や補助を掛けてやる。
完全に緑マーク、友軍になった。
実体がある奴は任せよう。
霊体を相手する。ゴーストやレイス。
神聖付与ならダメージが通る。
炎魔法の熱や光も苦手な様で。
錬成魔法、タール。着火。
「あ、あっ! ああう!」
あっと、しまった。
アルラウネさんも炎苦手だった。
治癒魔法。あと水魔法で消火。
と反対からゾンビが迫る。
振り返りつつ炎魔法。
急に振り返って処理ミス。
水魔法も同時発動してしまった。
……ボシュッ。
火と水が合わさって暴発した。
新魔法? いや、物理現象か。
しかし、物理現象を魔法で再現したら?
タイミングを合わせる。
炎、水、同時発動。ブシュン。
煙って火が消えるだけだな。
火力も水量もイメージに足りない。
諦め切れん。
工夫だ。圧縮してみる。
並列、水・重力。
連続・並列、水・炎。
速射で追い掛けて並列、炎と炎。
高温圧縮された水。
これが重力魔法の効果が切れて爆散。
発動名は水蒸気魔法ヴェイパー。
次いで脳内にアナウンス。
『水蒸気魔法が習得可能になりました』と。
見つけたぞ、複合・派生魔法。
「あーうー。
人間さんーありがとー♪」
一頻りアンデッドを掃除して、一息。
白い花のアルラウネが駆け寄って来る。
「ああーう」
「あんぜー、無事かー」
「親切な人間さん居たー」
お仲間らしいのも集まって来た。
ピンクの花と、赤い花のアルラウネ。
はて。花の形も多種多様。
一族で同じ花って事は無いのか。
図鑑でも赤い花だと断定されていたが。
解析魔法。アルラウネ『亜種』と表示。
亜種。似て非なる物という事か?
思索していると、アルラウネ達。
行こう行こうって……どこへ。
俺を丘の上へと引っ張り出す。
何となく、言われるままに続く。
俺はまだ催淫値でも残っているのか。
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