黒鷲の旅団
6日目(1)育て、育て

 夜更かしの割には普通に起きられた。
 寝る直前、自分に付与した夢操魔法。
 こいつが功を奏したらしい。

「むぐむぐ……んまいんまい」
「女将、お代わりー」「私もー」

 子供達、今日はよく食べる。
 健康的でよろしい。
 レーネとか食が細いかと思っていたが。
 今日はよく食べる。
 その調子で、すくすくと育ってくれ。

 微笑ましいなと思って見ていると。
 皆、チラチラと視線を向けて来る。
 何かと目が合う。

「や、やっぱり、見られています……」

「ほらほらー。
 可愛い可愛いって見てるんだよー」

「ががが頑張って食べないと」

 あ、これ、俺のせいか。

 昨晩、沢山食べるフェドラを見て。
 可愛いと言った気がする。
 そのフェドラの話が広まって。
 だから無理してでも食べているのか。

「でも、太っちゃうよ」

「ペトちゃん、おっぱいは脂肪だよ。
 ちょっとは太らないと」

「ううー、そう言われると……頑張る」

 ペトリナを説得するユッタ。
 自分のペースで良いんだからね?

 食後、刀とツヴァイハンダーの修繕。
 ……ダメだ、自力じゃ直せん。

 特にランスロットにやられた両手剣。
 もう『く』の字ではない。
『ク』の字に曲がっている。
 20m吹っ飛ばしたのも峰打ちだったのか。

 修理はハミルトンに相談。
 相談したら呆れられてしまった。

「お前さん、今度は何と戦ったんだ?」

 まあ、ちょっと、野地合いを、な。

 修理を……買い替えた方が早いか。
 代金代わりに鉱石を提供する。
 他の武器、数点を修理に。
 終わるまで魔女協会に顔を出す。

「楽しんでくれたかな?
 いひひひ」

『魔物美女大全』を受け取りながら。
 これを混入させたのはシャンタルらしい。
 困ったイタズラ者め。

 それよりシャンタル先生。
 派生魔法を見つけたんだが。
 水蒸気、砂塵魔法を披露する。
 シャンタルは目を丸くした。

「何だコレ。おーい、フレスたん」

「えっ、蒸気?
 ちょ、ちょっと待ってください」

 何やら集まって来る魔女達。
 どんな秘術だ。錬成系か。
 魔法特許は云々。
 他派閥の大魔女まで出て来る始末。
 え、俺が最初の使い手かも知れんって?

 大魔女筆頭ジズデリアが通信魔法。
 相手は大陸魔法機関長、ディミティウス。

「新たな魔法と思われます。特許申請を」
『承知した。まずは概要を見たいのだが』

 スキルポイントを割り振り。
 伝承可能レベルまで上げる。
 まず水蒸気魔法を披露。
 ヴェイパーボム。ヒートクラウド。
 スチームバレット。
 レベル上げてみると、案外幅広い。

 お次は砂塵魔法。
 広域展開のサンドストーム。
 一点集中のデザートパイル。
 固定型のサンドウォール。
 これは防御にも使えそうだ。

 審査結果は……すぐには出ないか。
 申請は通るだろうとディミティウス氏。

 何でも、魔法作成の秘儀。
 魔法合成システム。
 これが実装されて1年足らず。
 まだまだ未開拓な分野も多いのだとか。

 炎と水、土と風は反発属性との認識もある。
 精霊魔法、加護神の相性?
 ソーサリーだけでは無理?
 アルケミック分野が必要だった?
 専門的な単語の解説。
 俺にはよく分からん。

 分からんが、見つけたんだから俺の物か。
 時間が掛かるのはランク付けの問題だと。
 午後には結果が出ると言う。
 後でまた寄って聞いてみよう。

「とうとうルーマニアから新魔法か。
 神聖教会を出し抜く手札になれば良いが」

 武闘派ぶりのフリアさん達。
 よっぽど嫌いなんだな、神聖教会。

 特許を取得した場合。
 伝承時に特許料を取れる。
 つまり収入源としても活用出来るのか。
 今後も探してみるとしよう。

 鍛冶屋に戻る。
 子供達はみんな揃っていた。

 ユッタと爺ちゃんが仕事して。
 レーネやペトリナも興味津々。
 鍛冶仕事に興味があるのか。
 こういう創作系の技術を教えるのも良い。
 戦うしか出来ないとな。
 戦争が終わった時に困ってしまう。

 そもそも、子供達を戦わせている。
 鍛える為とはいえ。
 俺にも罪悪感が無いでもない。

 次は道具屋で矢弾の補充。
 という所で、招集の鐘が鳴った。

 うーん……一旦、酒場に戻るぞ。
 どちらの門に向かうか。
 まずは様子を見てから決めたい。



前へ黒鷲の旅団トップへ次へ