黒鷲の旅団
6日目(9)魔女と歩む

 昼食後、魔女協会に足を運ぶ。
 用向きは特許の件と、もう1つ。

「魔女の魔法ですか?
 興味を持ってくれるのは嬉しいです」

 ユッタ達に通信魔法を覚えさせたい。
 という事で、フレスさんに相談した所。
 授業を受けさせてはどうかと。

 魔女協会。
 魔女の拠り所にして育成機関。
 他の大魔女達も歓迎の様子。
 レイヴンヒルト、フッケバエナ。

「しかし、我ら魔女協会で良いのか?
 教えられる物に自信が無いワケではないが」

 首を傾げるのは大魔女フリアリーゼ。
 国内魔法系ギルドは複数あり。
 他に魔術師ギルド、錬金術師組合。
 そちらの方が社会的地位は高いという。

 しかし、そのお高い連中だ。
 子供達が虐められても困る。
 地位は問題にしない。
 親身になってくれる事を重視したい。

「ふん、そうか……
 子供の力にはなりたいが。
 しかし部外者に教えるとなるとな。
 他の魔女と同じには」

 勿論。部外者だ。
 せめて授業料は払う。
 外に出せない秘術もあるだろう。
 無理に教えてくれなくて良い。
 本当に、通信魔法1つあるだけで。
 生残性が大きく違う。

「まあ、触りぐらいなら良いか。
 初級授業を解放しよう。
 その先は検討させて貰う。
 ああ、それと特許の件だが」

 判定が来た。
 ハインリヒ氏の特許取得を承認。
 水蒸気魔法は攻撃魔法Bクラス。
 砂塵魔法は多目的魔法Bクラスと。
 それぞれ認定された。

 Bクラス。クラス?
 普通の炎や水がDクラスという。
 まあ、ぼちぼちか。

 特許使用料は20万として。
 伝承に当たって請求権が?
 文書にして送るそうだ。
 後で確認しよう。

 伝承して料金が取れる。
 副収入としては有難いが。
 要り様な奴を探し回るのは少し面倒か。

「そこで私達の出番なんですぅ〜♪」

 と、シャンタルたん。
 妙に媚びた声と仕草……何だって?

 特許料を一部頂ければ伝承代行を行うと。
 魔法機関ならどこでも出来るのだが。
 ここの魔女協会がお勧めです?

 まぁ、良いか。
 お任せしよう。

「ではでは早速ぅ。
 配分についてですけどっ♪」

 今度はヘリヤさん、手揉み手揉み。
 完全に金ヅルと思われてるな……

 ヘリヤさんから。
 薬草販売価格割引きのご提案。

 フレスさんからも?
 素材買い取り額上乗せのオプションを提示。

 更にシャンタルたん、定期健康診断。
 魔女のイベントご招待券等々。

 要は、サービスを追加する。
 その代わりに取り分を増やせと。
 残り13万4千と端数幾らかで……

 うーん……面倒だ。
 半分の10万ずつにしよう。

 Bクラス1つ1回伝承。
 1回につき、俺と魔女協会で10万ずつ。
 こちらもお世話になっている。譲歩する。

「お、おお、マジすか!」
「さっすがハインたん、太っ腹ぁ〜♪」
「さ、早速触れて回りますね!」

 直接伝授したシャンタルたんは除外。
 各派の大魔女・上級魔女が習得する。
 10万ずつ支払いが……
 なるほど、デカいなコレ。

 Bクラスが2つずつ。
 大魔女と上級魔女で17人。
 唐突に340万。
 こんなに貰って良いんだろうか。

「何の! 安い安い!」
「これからも頼むよー!」

 魔女は魔女で喜んでいるが。
 思わぬ大金。どうしようコレ。

「あ、じゃあ、お家買える?」
「カリマちゃん、そこまでは悪いよー」

 カリマの気遣いに遠慮するフェドラ。
 いや、みんなの活動拠点だ。
 1つ買ってみても良い。
 ただ『デッカイ家』は相当に高いらしい。
 家を買うなら、もっと貯めてから。

 参考までに、神人の持ち家カタログ。
 20人収容できる屋敷が2千万。
 まだ桁が足りんな。

 もっと仲間が増えるかも知れん。
 合わせて増築するか。
 そうなると必要額も増える。

 どんどん魔法を見つけて稼がないと?

「そ、そっ、そんなにするんだぁー……」
「そんなに出そうってのが驚きだよ」

 子供達、感嘆。
 聞いていた魔女達も関心顔。
 大魔女ジズデリアが割って来る。

「貴殿について、聞かせてくれないか。
 恵まれない半亜人の子を抱え込む。
 使い捨てるでも、女として扱うでもなく。
 ならば貴殿は、どういうお人好しなのか」

 どういうお人好しか……そうだな。

 欲望で動く暴力装置。
 それにお人好しの皮を被せたのが人間だ。
 俺は唯の人間だ。
 自分の欲求に従っているに過ぎない。

 自分の子供達の為なら神様だって殴る。
 そんな唯の普通のオジサンだよ。

 と、ジズデリアは目を丸くして……
 何? もう一回言って?
 何やらメモを取られた。
 ちょっと恥ずかしいんだが。

「ふひひひ、始まったよ。ジズ語録」
「カッコいいセリフとか書き溜めてんの」

 レイヴンヒルトとフッケバエナがニヤニヤ。
 恥ずかしそうにメモを取るジズ様。
 若き若き筆頭大魔女様。
 心はまだまだ厨二だったのか。



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