黒鷲の旅団
6日目(11)剣と血と
「そうかい、疲れちゃったか。
学校とかも、ねー。
行かせてやれると良いんだけどねぇ」
眠ってしまったマリナを受け取るベラさん。
急に家に戻ってると驚くだろう。
起きたら教えてやってくれ。
学校については、俺も気になっている。
戦って、自分で生活費を稼ぐ子供達。
だが長期間就学するには貯えが必要。
稼がなくても暮らせる金が要る。
特許連発か、他の手段で一山当てるか。
と同時に、差別の方も気になるワケで。
ただ金やって学校に入れたとして。
虐めの標的にされかねない。
あるいは被差別者を集めて学校作れるか。
それだと維持費とか幾らするんだ。
土地も確保しなきゃならん。
より多くの資産が必要になる。
家も買いたいし。
金はまだまだ必要だなぁ……
「ががが学校!? やだよ!
おっちゃんに教わるから良いよ!」
「そっ、そうだよ!
これからも教えてください!」
イェンナにユッタ。
分かった分かった。
急に置いてくとかじゃないから。
マリナだけ1人でも悪い。
夕食は各自で済ませようか。
イェンナは下層区の教会へ。
一度様子を見て来たいという。
ティルアとカリマは友人マルカの所へ。
通信魔法で呼び掛けている。
サンドラはユッタを自宅に送る。
送りながら、魔女協会へ帰還。
さて、俺はどうするか。
集合しない。
夕食を急ぐ必要も無い。
兵士の訓練場で技を増やす事にする。
レーネは興味があるのかついて来た。
フェドラはペトリナが眠そう。
一緒に酒場の部屋へ。
トゥーリカは……ポケットの中か。
「あっ、妖精さんだ!」
「妖精さんのおじちゃん!」
訓練場。
キャスティーナさん一行の姿。
娘のキュラとキュネだったか。
相変わらずトゥーリカに興味津々。
嬉しそうに駆け寄って来た。
「はっ、はぁーい。
トゥーリカちゃんだよー」
ポケットからトゥーリカ。
ちょっと疲れてる様だが。
謎のサービス精神を発揮。
愛想を振りまいている。
キャスティーナさんは剣士だったか。
急に距離を詰める技、について聞く。
「おそらく、縮地スキルだな。
一息で距離を詰める。
バロンに聞いたよ。
ランスの坊ちゃんと戦ったって?」
剣士キャスティーナさん、指導。
俺に縮地を伝授してくれた。
加えて、斬首、粉砕、裂空スキル。
更には暗黒剣、音速剣と。
剣を使う技も教えてくれた。
必殺剣の類も魔法と同じらしい。
熟練者から伝授できる様子。
斬首は軌道補正。
裂空は魔法も断つ剣技。
粉砕は打撃攻撃にボーナス。
暗黒剣は暗黒属性付与。
音速剣は攻撃速度を上げる。
こんなに貰って良いのか?
「あの坊ちゃん調子に乗っているからね。
またいつか一泡吹かせてやってくれ。
期待してるよ、リアル・マーセナリー」
今の俺はバウンティハンターと呼んでくれ。
……っと、聞いてないな。
騎士団長と手合わせに向かう様だ。
俺は指導役のギャレットに金を払う。
他にも基礎技を習おう。
持っていない戦技スキルがある。
巻き打ち、逆袈裟、斬り払い、兜割り。
見るとレーネも剣を借りていた。
ヴァンパイア世界の伯爵令嬢。
剣術も貴族の嗜みの1つか。
得意はレイピア、サーベルも使えると。
緊急用の近接要員として育てるのも良い。
少し手合わせしてみよう。
錬成魔法、クリエイト・ウッドマテリアル。
木工・工作スキルで片手用木剣を作成。
多少の打ち身なら治癒魔法で治る。
思い切って打って来て良いぞ。
レーネと打ち合い、数分。
最初は遠慮がち。
突きを繰り出していたのだが。
段々火がついて来た。
動きにキレが出て来る。
木製サーベルでも突きをメインに。
突進と後退、前後移動が速い。
姿勢を変えて上下にも揺さぶって来る。
畳み掛ける様な連撃。
俺の喉元に鋭い一撃。
躱し切れない。縮地で斜め前へ。
突きは俺の肩口を打った。
「はあ、はあ……す、すいません……」
剣を取り落とすレーネ。
むしろ上手いと褒めたいのだが。
急に泣いてしまう。
見ると青い瞳が赤くなっている。
彼女には懸念があった。
吸血鬼の血の発露。
感情が高ぶると衝動を抑えられなくなる。
力が溢れるだけなら良いのだが。
行き過ぎると変身してしまう?
「私、化け物になってしまうんです。
おじさまや、みんなに、何かあったら」
大丈夫。大丈夫だから。
抱き締めて鎮静。鎮静魔法。
帰ったら落ち着いて話そう。
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