黒鷲の旅団
6日目(14)遭難孤児救助隊
〜暗夜行〜
門の外へ。
今夜も変わらずアンデッドの群れ。
俺と鍛冶屋コンビで近接。
骸骨どもを蹴散らしていく。
ウェルベックは火炎放射器を使うのか。
神父達は除霊の奇跡。
魔女達は炎の魔法で応戦する。
銃が効き難いというユッタ。
魔法付与を掛けようか。
えーと……分解魔法付与。
弾丸が当たると骸骨達が爆散。
鎧の残骸と骨系素材に化ける。
「そう来たか!」
「うひょー、新しい!」
シャンタル、ヘリヤ感嘆。
レーネやイェンナも付与して欲しいと。
順番な。
どうにか戦線は維持出来ている。
問題は救助対象。
エリック達はどこだ?
探知、空間魔法。
索敵範囲が赤い点で真っ赤。
広く見過ぎている。
範囲を狭められないか。
索敵魔法8位ディープサーチ・ナロウ。
小範囲を深く探る。
赤い点同士の間が見える様になる。
索敵・空間魔法ばかり。
随分とレベルが上がった物だ。
日頃から警戒しているからだろう。
そして、どんだけ居るんだアンデッド。
戦争の後すぐだ。
材料、死体が多いのも分かるのだが。
こう多くては、武器の損傷が激しい。
分解の逆に錬成。
タールを着火してゾンビを焼き散らす。
ゾンビに神経魔法は効かん。
束縛や遅延、凍結魔法で足止めする。
植物魔法、ツタで捕縛するのも有効そうだ。
一旦、進軍停止。
進路が分からなくなって来た。
空間魔法の脳内マップを展開。
小範囲・高感度探知魔法で辿る。
視界でも探る。
アンデッドの動きに異常は無いか。
アンデッドが何かに群がっている。
索敵魔法、グリーン。友軍判定。
そこに誰か居る。しかし数が合わない。
急行すると……アルラウネだ。
昨日のアンゼリシア達。
この際だから救助しておく。
「あーう、いつもスマヌですー」
「うおっ、アルラウネ!」
「ええ、旦那の仲間? 顔が広いな」
一瞬冒険者チームがピリッとしたが。
俺と会話するのを見て戦闘停止。
理解が早くて助かる。
彼女らにも聞いてみよう。
子供の集団を見なかったか。
「これ関係あるかー?」
銀の、糸……違うな。
鑑定スキル、銀髪。
解析魔法、半堕天使の髪だと。
半堕天使というと、ノイエだろうか。
この辺を通ったのだろう。
そしてこの先は、丘。この前の丘だ。
墓地も点在するアンデッドの温床。
見上げると、宙を漂う不死の魔法使い。
ヘリヤが言う。
ワイトとかいう亡霊魔道士だと。
どうあれ、あいつを片付けよう。
大物がウロウロしていては邪魔だ。
捜索にも支障が出る。
「手伝うー!」
「だうー!」
「あいつ、やつける。
私達とても嬉しい」
アルラウネ達にも動機がある。
お気に入りの丘を奪還したい。
植物魔法、ツタで弓矢を作って参戦する。
それでは……閃光魔法で先手。
神聖付与の一斉射。
「オ、オオ、オオオノノノレレレレ!」
苦しむと同時に怒り狂うワイト。
手下どもを召喚、数で押して来る。
結構な数なのだが、こちらも負けない。
ガイゼル隊、昼間慣らした防御陣形。
その肩越しに神聖魔法付与。
子供達とアルラウネ弓兵隊の遠射が狙う。
ワイト自身の放つ雷撃魔法。
こいつは反射魔法が防ぐ。
ワイトもなかなかやる様で。
霊体化して矢弾を通り抜ける。
魔法も付与分だけではダメージが小さい。
直接魔法で狙う。
と、今度は手下に引っ掛かる。
俺と魔女達で反射魔法。
猛攻に耐えて隙を伺うが。
ザコの数が多い。前に進めない。
微かにイェルマイン達の姿も見えたが。
まだ遠いか。
側面から悲鳴。
放置された荷車の陰だ。
孤児、エリック達。
1人戦っている赤い髪がマルカだろう。
慌てて駆け寄ろうとしてマズった。
ペトリナがワイトの雷撃に撃たれた!?
「「こ・い・つ・めぇーッ!」」
変貌するレーネとフェドラ。
レーネの目が赤く光り、牙と爪が伸びる。
フェドラには翼と巻き角、尻尾が生えた。
半人半魔、魔の方の力を発揮した姿か?
恐るべき膂力のレーネ。
クロスボウ、鉄の太矢を連続装填。
次々にワイトを串刺しにする。
ワイトはすり抜け……られない。
フェドラが何か阻害系の魔法。
終いに、2人掛かりの雷撃魔法。
魔力も増しているらしい。
ワイトも堪らず爆散する。
「ペトちゃん!
ペトちゃん、しっかり!」
ユッタの声に、我に返って振り返る2人。
……大丈夫だ。意識がある。
ペトリナには俺が治癒。
命に別状は無い。
電流は周囲、戦死者の装備に流れた。
ショック状態には鎮静魔法。
感電は中和魔法で対処済み。
ダメージは今、治癒と鎮痛魔法。
大丈夫。大丈夫だよ。
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