黒鷲の旅団
7日目(1)魔道を共に

「うぇるか〜む!
 準備OKだよ!」

「他の派閥も説得できたよー」

 朝食後、子供達は酒場に待たせつつ。
 俺は魔女協会を訪問した。
 出迎えたのは、いつものコンビ。
 ヘリヤとシャンタル。

 使い魔を持つには称号が要る。
 特に技能系称号の管理。
 これに各専門ギルドとの提携が必須。

 審査や修練を経た上で。
 称号の取得やランク上げに至る。
 そういえば冒険者の称号。
 アレもギルドで申請していたか。

 本来ならば、魔女協会。
 男子禁制の組織なのだが。
 協力者、用心棒扱い。
 特例中の特例。
 俺の魔法称号も管理してくれる事に。

「いや、ほら、他のギルドに所属されたら。
 新魔法見つかった時なんかさー。
 絶対そっちも特許預けろって言うし」

 特許の分け前、貴重な収入源、か。

 魔女協会の起源。
 知識ある女達の寄り合い。
 不幸な女達の、避難所。駆け込み寺。
 初代大魔女達の目指した所は、それだ。
 封建めいた男性優位の社会。
 そりゃあ需要はあるだろう。

 しかし同時に。
 国家からの後ろ盾も無い非正規組織だ。
 外部からの資金提供が無い。
 自分達で稼がなければならない。
 魔女協会も慈善事業とは行かない。

 サンドラのみならず世話になっている。
 俺も協力するに吝かではない。

「そう言ってくれると思ったよー。
 じゃ、はいコレ」

 何やら書類を渡される。
 筆記試験……ではない。
 これは唯の申請書だ。
 試験は? 試験は無いのか。

 サンドラの試験は正魔女認定試験。
 職業魔女として食って行けるのか。
 その適性を図る物らしい。

 実際、うちの専属魔女。
 稼げては居るのだが。
 通過儀礼的な意味合いもある様子。
 避けては通れない様だ。

 他方、俺の場合は審査料と書類だけ。
 実力があるかは解析魔法で分かる。
 後は認定証の発行だの何だのと。

 ん、審査料……金取るのか。

「いえーす!
 沢山チョイスしておきましたー!
 まずは基本職。
 いわゆる魔法使い。ウィザード。
 これを上級魔道士に。
 ハイ・ウィザードに昇格しましょう!」

「他には専門職称号。
 回復専攻のヒーラー。
 元素魔法はソーサラーもオススメです。
 あと魔法付与のエンチャンターとか」

「植物魔法を使うならドルイド方向だね。
 錬成ならアルケミスト。
 幻惑者ウォーロック。
 あと、シャーマンなんて興味無い?」

 おい、本当に沢山あるな。
 全部売り込むつもりか。

「お願いしますよハイン様〜。
 収入が要るんですぅー」

「可哀想な女達を助ける為と思って〜」

 また媚び媚びで……
 まあ、いいや。金で買えるなら安い物だ。

 神人は称号を取得すると、補正が掛かる。
 パラメータや与ダメージが増えたりする。
 NPCの見解としては?
 各分野の精霊・守護天使が云々。
 まあ、貰っておいて損は無いだろう。

 精霊魔法、地水火風の『ソーサラー』。
 雷は四大元素に含まない。
 強化から除外される様だが。
 自然系の『ドルイド』で自然現象を強化。
 植物魔法、雷、水や風にも効果が乗る。

 治癒の『ヒーラー』は説明不要として。

 錬成の『アルケミスト』。
 これは毒や強酸魔法にも効く。

 補助の『エンチャンター』。
 強化の他、付与時間も伸びる。

 阻害の『ウォーロック』。
 これは幻覚系にも効くのだが。
 心霊の『シャーマン』。
 これも呪詛魔法の阻害には作用しそうだ。

 それと総合的な魔道士『ウィザード』。
 昇進で魔法全般の適性が増える。
 適性が増えると魔法全体が強化される。

 新規取得に各1万。が、7つ。
 ハイ・ウィザード昇進に2万。
 出費としては総額9万。

「はは。すげー。
 全部審査通るよ」

「さっすが。
 このシャンタルたんの弟子」

「あ〜、何こいつ。
 1人で先生ヅラして〜」

 シャンタルたん。
 自分でシャンタルたん言い始めた。
 何気に気に入ったのだろうか。

 所持魔法を照らし合わせて貰って。
 審査終了。書類を受け取る。
 初級。条件は重くない。
 幾つか魔法を持っていれば審査も通る。

「じゃ、じゃあ。
 わたし試験無くてもー」

 見に来ていたサンドラちゃん、こそこそ。
 しかしヘリヤとシャンタルに捕まえられる。
 折角だから試験やろーぜー、等々。

 サンドラちゃん、俺からも頼みたい。
 俺に使い魔を連れ歩く権限が出来たとして。
 俺だけだと不便だから、試験受けてみて。

「で、でも、ううー……受かっちゃったら。
 そしたら、私、帰らないとダメ?
 もう会えない? 試験やだ。やだやだ」

 正魔女になった場合。
 正式に魔女協会に所属する。
 魔女協会に尽くす必要が出て来るのか。

 じゃあ、試験受かったら。
 俺が魔女協会から魔女サンドラを雇おう。
 仲介料が幾らか分からんけれども。

 受かったって変わるものではないから。
 思い切って、お前の力を見せてやれ。

 目をウルウルさせて頷くサンドラ。
 花人達も迎えに来て……
 それじゃ、行こうか。



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