黒鷲の旅団
7日目(2)集う新人

 敵軍襲来を知らせる鐘が鳴った。
 改めて酒場で待機。
 ここに同行するフレスさん達。
 サンドラの試験の為か。
 実践を見て評価に当てたいと言う。

「おやおやまあまあ。
 みんな使い魔さんかい?」

 花人の姿に少々戸惑う女将だが。
 険悪さは無い。亜人にも慣れたかな。
 俺の連れだからと信用しているか。

「ああ、昨日の。
 正式に契約したんだ?」

 ガイゼル隊は早々に馴染んでくれる。
 魔女はベデリアやサスキア。
 契約と、知見もあるのだろう。

 アンゼリシア達の首に首輪。
 下げられたタグに名前が書いてある。
 これが従者の証か。
 フレスさんが用意してくれた物。

 しかし、遠目だと分り難い。
 友軍からの誤射が怖いな。
 何か持たせた方が良いだろうか。

「アンゼリシア・アンゼリカ
 ・シュタッフェンバウム言うです」

「同じく、ベゴニエッタ・ベゴニア
 ・キルヒシュラーガーなり」

「ポインセティナ・ポインセチア
 ・エンゲルハウト。御身の前にー」

 アンゼ達、自己紹介。
 しっかりミドルネームまである。
 亜種は通常種より格上だろうか。

 それはそれとして、女将。
 俺に客だと。

「頼むよ。あたしらも。
 仲間に入れて欲しいんだ」

 一晩考えてみた孤児・少女兵。
 カーチャとノイエが来訪。
 イェンナやフェドラの同窓だ。
 仲間に入れて欲しいという。
 これで安心だと喜ぶイェンナ達。

 安心と言われると、どうか。
 不安が無いでもない。
 昨日は戦場でレーネが矢傷。
 夜はペトリナが魔法を食らって。

 レベルを上げ、体力が付いていた。
 だから耐えられた様なものの。
 俺の指揮、腕前。
 果たして全員無事に帰せるかどうか。

 一応、認識は確かめる。
 絶対安全とも言えないんだ。
 決意を固めた決め手はあるか?

「えっと、その……私、半分堕天使で。
 だっ、ダメかな?
 い、良いんだよね? ね?」

 勿論、構わない、が。
 詳しく話を聞きたい。堕天使。
 神聖教会から敵視される存在、か。

 孤児院に教会に本部から人が来る度。
 ノイエは逃げ隠れしていたという。
 親友カーチャも何とかしたいと悶々。
 神聖教会の世話になりたくない。
 ならずにやっていけないか模索していた。

 そんな所へ、亜人種や妖精。
 花人も連れた俺が助けに来て。
 正体を明かしたレーネやフェドラ。
 どうやら受け入れられている。
 千載一遇の大チャンスと思った。

 自分達で戦場に出てしまう子供達。
 俺が見ていた方がマシなのか。

 受け入れよう。
 しかし、言い含める。
 レベルが上がるまで……えーと。
 慣れて身体が丈夫になるまでだ。
 なるべく前に出ない様に。

「ここ、いいね」
「大事にされるね」
「だろー?」
「えへへへ」

 楽しそうにコショコショ喋る4人。
 その笑顔が絶えない様にしたい。
 俺も精進して行かなければ。

 ……そう言えば他の子は。
 エリック達はどうした?

「おお〜、旦那。
 おーい、ハインの旦那が来てるぞー」

「あっ、おはようございます」

 裏手からイェルマインと。
 マグダレーナもか。兄妹。
 その連れ合いにエリック達の姿。
 あちらの世話になる事にした様子。

 エリック、アレン。
 テオドール、デュオニスの4名。
 綺麗なお姉さんの方が良いとは。
 なかなかのスケベだな。

 照れるテオドール。
 へへへとエリック。
 更にデヘヘヘとマグダレーナ。
 少し褒めたぐらいでチョロ過ぎるぞ。
 しっかりしてくれ。

 構成は、マグダレーナを旗頭に。
 参謀役がイェルマイン。
 従騎士ノインさん。
 エリック達、少年兵。
 生存したヘートヴィヒさん。
 更に騎兵お姉さんを2人追加していた。

「き、き、昨日は、あのっ」

 ヘートさん、ペコリン。
 礼には及ばないよ。
 命が助かって良かった。

 新人騎兵2人。
 フレンツヒェンとベアトリーセ。
 ヘートさん同様、スラッとしてる。
 およそマグちゃん体形。

「ああ、似た様な感じっすかね。
 その辺はシステム雇用なんで」

 イェルマイン曰く。
 システム雇用のNPC。
 多少、雇い主の好みが出るらしい。

 しかし、そうなると。
 イェルマインの好み。
 妹マグダレーナに近いのか。

 2人は顔を見合わせて。
 デヘヘと笑う。仲が良い。
 ちょっと度が過ぎる気もするが。

 あと、客がもう1人。マルカか。

「へへっ、あたしも手を貸してやるよ。
 オッサン見張ってやるからなー」

「大丈夫だってばー」
「おじさん、良い人だよ」

 マルカは俺の監視、という名目で?
 ティルアとカリマは旧友との合流。
 何だかんだ、嬉しそう。
 友達と一緒に冒険できるのが嬉しい。

 しかし監視役、と。
 古株のユッタ達は渋い顔をするのだが。
 子供使いの悪評も伝わっているだろう。
 誤解を解くチャンスを得た。
 そう前向きに考えよう。

 さて、カーチャやノイエ。
 新人の装備はどうするか。
 マルカには剣がある。
 が、飛び道具も持たせたい。
 鍛冶屋に寄りたい所。

 しかし、騎士ギャレットらが来訪。
 参戦者はこちらにと誘導される。
 あとは輜重隊で揃えようか。

 と、子供達が意味深に笑う。
 どうした?



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