黒鷲の旅団
7日目(12)下地が足りない
「アザレリーナ・アザレア
・ヴォーヴェライトですー」
「バーベネリア・バーベナ
・シュプリンガー、馳せ参じたりー」
新たに増えた花人、2名。
それぞれ色合いは違うがピンクの花。
花人のネットワーク?を辿って来たらしい。
まあ、食事も水と土だというし。
戦力は欲しい。受け入れよう。
これで花人も6人。
丁度、子供達も兵科ごとに6人ずつ。
アンゼさんを隊長に任命。
第4小隊としよう。
ヘリヤに使い魔の首輪を頼む。
不足分を取りに行ってくれる。
待つ間、俺は縫合・除細動魔法を伝授。
フレスさんを通して特許申請を頼む。
「縫合はともかくとして。
ジョサイドーというのが分からん」
「んー、蘇生魔法ってワケじゃないのか」
フッケバエナとシャンタル。
除細動魔法。
止まった心臓を動かそうとする魔法だ。
しかし脳とか壊死した後では手遅れに。
この世界の住人には、どう言えば伝わるか。
魂が離れてしまったら生き返らない、とか。
この辺で理解を得られるだろうか。
動かせるのは心臓だけだ。
治癒や止血も必要になる。
それと、1発で効かなくても諦めないで。
「ふーん? ちゃんと使えるのかね?」
「そうだね。
これは、きっと役に立つ……
逃げて行く希望の女神。
その後ろ髪を掴む為の魔法だよ」
首を傾げるフッケバエナとは対照的。
シャンタルは熱っぽく語る。
ぎゅう、と杖を握り締める。
魔女の診療所も担当する彼女。
上級魔女、魔法医療師。
これがあの時あれば。
そんな経験もあったのだろう。
「よ〜う、なんか面白い事してるう?」
公主様と近衛隊。
魔王軍討伐の帰りか。
丁度良いので急ぎ報告を。
立ち寄った集落は5つの内、4つが全滅。
残る1つも半壊状態で、救援が要る。
公主様、難しい顔。
「全滅してない村があるぅ〜?
やっらしい攻め方してくれるわね。
見殺しもマズいけど。
戦力を裂く余裕なんて……
ううーん、どうするんだコレ」
「そこで公主様に相談ですけどっ♪」
フッケちゃん、フッケバエナ手揉み。
村人を避難させるだけ。
それなら魔女協会が手伝っても良い。
生存が確認されたのは6人程度。
避難場所さえ提供出来るなら良し。
転移魔法で引っ張って来る。
貴重品の運搬もサービスすると。
「う、ううーん……でも。
お高いんでしょう?」
「背に腹は代えられませんぜ。
うぇっへっへ」
フッケちゃん、悪い顔になっている。
代金は1人頭50万。盛ったなぁ……
湖畔の村人、強制避難作戦を開始。
しかし魔女だけでは承諾を得られない。
という事で。近衛隊が先行。
村人達に話を付けに行く。
フッケバエナ、レイヴンヒルト隊。
空からホウキで後を追う。
そちらの方は任せて、俺達は帰ろう。
ヘリヤが使い魔の首輪を持って戻った。
酒場に戻り、夕食。
ずっと緊張状態だった。
子供達がヘトヘトだ。
活力魔法を多めに掛ける。
ゴハン食べたら早めに寝る様に。
あー……ベッドが足りないか?
増えた子供達の泊る所に困る。
フレスさんに相談。
魔女協会の空き部屋を貸してくれた。
くれたけれども、使っていない部屋。
使う様になったら空けてやらないと。
花人達にしても、そう。
増え続けるなら敷地が足りなくなる。
宿泊場所、家……うーん、家か。
所持金は140万といった所。
神人用の家カタログ。
全員収容出来る屋敷を買うには数千万。
安い物件を探すか、金の方を工面するか。
金を貯めなきゃ……と思うのだが。
どうも放出しがちである。
ツェンタ、アイリスの村で衣類代20万。
テルーザ、エメリナの村で援助金100万。
因縁、後腐れを断ち切る為。
仕方ない出費とも思うのだが。
やりたい様にやるには、下地が。
生活の基礎が必要か。
「そんじゃ明日なー」
「また明日ねー」
子供達を魔女協会に送って。
俺はまた少し、門の外に出て来よう。
課題は新魔法探しだな。
もう少し積極的にやってみたい。
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