黒鷲の旅団
7日目(13)爆炎と轟雷とウッカリの魔女

「よっ、イケメンじゃん」

 南門を出た所で、パラディオンの仲間。
 バスターさんとフェンリルさんか。

 別にイケメンじゃないが。
 こんな所で何を……
 と聞こうとした所で、爆発音。
 草原の方で、繰り返し何かが光っている。

「今、メイアの奴が練習中なんだ。
 うちの紅一点。顔は知ってるだろ?」
 
「新魔法見つけるつって、さ。
 派手にやってて危ないんだ。
 あんたに先越されたとか言ってたぜ?
 悪いが、レベル上げなら他で頼めないか」

 パラディオン隊の紅一点。
 大魔女ロードメイア。
 彼女も新魔法、特許探しをしているらしい。

 まあ、一か所に居ても的が確保出来ない。
 遅れて来たこちらが譲るか……

「ぴゃああ! 助けて―!」
「助けて、ご主人ー!」
「逃がすか、おおりゃああ!」

 花人が追われて来てしまった。
 空から追っているのはロードメイア。
 敵意も無いのに的にしているのか?

 速射・加速魔法。縮地・瞬発スキル全開。
 花人達とロードメイアの間に割って入る。

 迫る炎魔法……いや、デカいな。
 速射・反射魔法。
 反射し切れずに大爆発した。
 戦闘ログに解析魔法。
 爆炎魔法エクスプロージョンだと。

「あっ、くそ、こいつ!」

 ロードメイア、急停止。
 空を飛んでいるのは浮遊魔法じゃない。
 さしずめ飛行魔法と言った所か。
 こんな敵意も無い様なのを何故追っている。

「モンスターじゃん! 敵じゃん!」

 ちょっと言葉が通じないな。
 勇者の辞書。
 魔物が可哀想だという言葉は無いか。

 そちらはそちらで事情がある、とは思うが。
 俺の使い魔候補だ。見逃して貰う。
 的が欲しいなら俺が相手してやる。

「言ったわね! 後悔すんなよー!?」
「ちょ、馬鹿、落ち着」

 フェンリルさんが宥めようと飛び出して。
 ズギャギャン。
 巨大な雷撃を浴びてしまった。
 えー……中和。中和魔法。あと治癒とか。
 大丈夫か? 死んじゃいないが伸びている。

「こ……こいつ!
 フェンリルのカタキ!」

 そりゃアンタだろと思いつつ。
 バスターや花人達を避難させる。
 巻き込まない様に距離を取る。

 再び巨大な雷撃。
 反射魔法。防ぎ切れずダメージが徹る。
 何をされている。解析。轟雷魔法?
 雷魔法3倍の何とかいう説明文。
 上位魔法の類だろうか。

 もう一撃来る……どうせ防ぎ切れん。
 いっそ撃ち返してやる。

 並列、障壁・記録。
 連射並列、反射・転写だ。
 再現魔法マジックリピート発動。
 雷撃が逆方向に飛んでロードメイアを撃つ。

「ぶふぉっ!」

 直撃した。防御考えてないなコイツ。
 レベル高いから致命傷には程遠いのだが。

 ロードメイアの反撃。爆炎魔法。
 再現魔法で相殺を試みるが、押される。
 再現力、再現魔法自体のレベルが足りない。
 向こうの方が火力がデカい。

 逃げ回っていると更に追撃が来る。
 地面を炎が走った……何だ?
 解析。走火魔法ラピッドフレイム?
 草原丸ごと焼き尽くす気か。

「ああっ、ヤバ!」

 加減を誤ったか。
 ロードメイアも慌てている。
 水魔法で消火活動。
 こっちに攻撃して来ない内に、俺も消火。

 水、水魔法。
 量はともかく範囲が狭過ぎる。

 水蒸気魔法。
 今度は量が足りず蒸発してしまう。

 とにかく火勢が強い。
 枯れ枝が火に触れる前から燃え出している。
 消火もだが、温度も下げないと延焼する。

 並列、凍結・蒸気。連射並列、凍結・水。
 速射並列、凍結と風だ。これだけ冷やせば。
 霧霜魔法フロストバーグ発動。
 張り付く霜が消火と冷却を同時に行う。

 消火が一段落した所。
 ロードメイアも降りて来た。

「へ、へへ……やるじゃん」
「やるじゃん、じゃねーだろ!」
「うぐお!?」

 ボコス。バスターさん、バスターぱんち。
 頭を押さえて蹲るメイア。
 パラディオン、公主達も走って来て……

 ちょっと落ち着いて。
 状況を整理しようか。



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