黒鷲の旅団
8日目(3)集う勇者達

 陣容。まず配置だが、南門へ向かう。
 敵は雲霞の如き魔王軍。
 これがかなりの大軍らしい。

 公主様や主力神人メンバーは北門に配備。
 戦力集中による速攻で敵公国軍を排除。
 然る後、南の魔王軍にも当たる予定。

 俺達の役目は時間稼ぎ。それと露払い。
 可能な限りザコを減らしつつ。
 本隊の到着を待つ。

 門を閉めて城壁の上から撃つか?
 連戦で門が傷んでいる、とギャレット。
 工兵が補修に当たっているが。
 その修復が間に合うかどうか。
 ギリギリまで門の外で戦う事になりそうだ。

「門を、街を守っての防戦になります。
 それと……留意点が」

 ローレンシアから留意点。
 敵の指揮官が魔王の娘だという。
 レベル3ケタの実力者。
 マトモに戦うと危ない。
 パラディオン達を追い返した奴らかな。

 対抗策は騎士団長クロイツァーの参戦。
 魔人と1対1ならば拮抗出来る。
 拮抗して、その間に公主様だ。
 駆け付けてくれれば、どうにか。

 ギャレット達は兵を呼びに行く。
 俺達は南門へ向かう。

「来てくれたか、心強い!」

 南門へ。
 俺の姿に、騎士団長が声を上げる。
 パラディオン達も一緒。
 リベンジマッチだと息巻いている。

 そんな彼らにレグハルト一行が駆け寄って。

「パラディオン先輩!」

「えーとー……
 レグ……レグハルトだっけ」

「メイアさん!」
「俺達も来ました!」

「あ、えっと……
 あっ、ハインじゃん。おーい」

 それぞれ好意が空回りしている様な。

 人望評価値、というのがあったが。
 これに神人の交友関係は含まれるのか?

 解析。俺、人望評価値61。
 レグハルトは24。
 もうちょっと頑張れよ、勇者様。

 ちなみにパラディオンが人望評価153。
 俺から見ても頼もしい先輩に思える。
 やはり数値は実情ありきだろう。

 レグ達に睨まれつつ、控えめに手を振る。
 何故か喜ぶロードメイア。
 照れてるとかではなく……

『そっち、準備出来てる〜?』

 イーディス公主の通信魔法。
 サナトス、イェルマイン達は。
 今回は北門の方か。

 こっちは魔王と因縁ある連中。
 勇者・冒険者チーム。

 俺は? 遠射が欲しいと。
 騎士団長からのご指名らしい。

 他所の少年少女兵はどうしたか。
 公主直々に集め、弓弩隊を編成中。
 指揮を執るのは士官候補生達。
 昨日面倒を見た女子達か。

 来るなと言っても出て来てしまう。
 戦場の貧しい子供達。
 放っておいても肉壁にされて死ぬ。
 指揮下に入れて後ろに回す、と。
 公主様も思う所はあったワケだ。

『まぁねーん♪
 それより、そっち気を付けてね。
 冒険者って勝手な奴が多いし。
 ちょっと手を焼くかも』

 もう手を焼いてるけどね。
 レグなんとかさんに。

 冒険者。勇者志望。
 魔王軍と当たる有志達。

 パラディオン、レグハルトの他にも居る。
 見た顔だと思ったらブレイドレイド一行。

「お、おおう、今回は味方か」
「まさか裏切ったりしないでくれよ?」

 魔王側かと疑われてしまった。違うから。

「うぃ〜っす。
 何か、旦那とも久々っすね」

 バリーのチーム。レベル120ちょっと。
 パラディオン達に次いで頼もしい。

 あとは、妖精を連れた神人魔女。
 物見遊山のサンダーバロンが城壁の上。
 戦場を見渡し、情報をくれると言う。

 主力は騎士団長と勇者志望チーム。
 連中で敵将を倒しに行く。
 後ろを守るのは俺達の弓弩・銃士部隊。
 盾役にガイゼル達、騎士・兵士の混成部隊。

 後衛の指揮を頼めるか、と騎士団長。
 子守、の方はともかくとして。
 一部では子供使いとか呼ばれている俺だ。
 全員が快く従うとも思えん。
 熟練の騎士ギャレットを指揮官に。
 俺は参謀に回ろう。

 参謀……そうだ。
 カリマ、ティルア、マルカ。
 お前達の役割だが。
 各隊の参謀を任せてみたい。

「サンボーって?」
「軍師だよ、軍師!」
「おおおおバカのあたしで良いのかよ!?」

 よく人の顔色を見ているカリマ。
 器用なティルアも洞察力がある。
 マルカ、学は無くとも戦闘経験は多い。

 敵が嫌がる事をするのが戦争だ。
 何をされたら嫌か。
 相手の気持ちを考えるんだ。
 よく観察して、こうすれば良いって。
 提案してみてくれ。

「よく見る……よく見るっ!」
「へへ、面白そうかもね」

「あたしが、軍師……
 や、やるぞおおおー!」

 ふとサンドラちゃん。
 鼻息荒く俺の肩を叩いて来る。
 分かった分かった。
 俺の参謀はお前だよ。

 盛り上がって来た所で、配置に着く。
 魔軍襲来まで時間は無いのだろう。
 南の空が、俄かに陰って来ていた。



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