黒鷲の旅団
8日目(4)魔軍を前に
陰って来た空。
魔法か何かで陰らせているのだろう。
南から暗雲、と。
その下に雲霞の様なアンデッドの群れ。
指揮官が優秀なのか。
綺麗に整列して進んで来る。
「いよっしゃあ、イイトコ見せるぜ!」
意気込んでいる、元後輩のバリー。
こっちの世界ではバリウス先輩か。
パラディオン隊に次いで高レベル。
ここは頼りにしよう。
敵将討伐組は……
と、バラバラに進み始めたな。
冒険者は元来、気ままな連中らしい。
指揮を執って戦わせるに向かない?
遊撃が主体となるだろうか。
状況に応じ、自由意思で助け合う様だ。
チームごとに全後衛、配置を考えている。
考えているが、防戦向きじゃないな。
敵将討伐は、可能ならば、の話だ。
本題は、修復中の門の防衛。
ここを抜かれると街が襲われる。
ガイゼル隊に声を掛ける。
ジェインとペネロペにも雇用費を払う。
悪いんだが指揮下に入って欲しい。
治癒やバフ、援護射撃。
見捨てないのを条件に承諾。
まずは木箱や荷車を集めよう。
門の前、側面を固める。
隙間は植物魔法、茨で埋める。
正面に盾を構え、肩越しに射撃。
確実に敵を減らして行く。
ギャレット達もこちらに習う様子。
荷物を並べて行く。
『ほっほう、ワゴンブルクだ!
後衛組は荷車を利用。
防衛陣地を構築中ぅ!
先鋒はパラディオンと。
バリウスにレグハルト。
さあ、一番槍は誰だ〜?』
城門の上のサンダーバロンさん。
通信魔法で実況。
レベル200超の物見遊山。
前に出さないのが惜しい、が。
こちらが敗走に追い込まれた場合。
彼が最後の砦でもある。
正面では勇者組が敵に当たった様だ。
相手をし切れないのが。
続々とこちらに向かって来る。
盾を構えるガイゼル達。
強張った面持ちに見える。
敵が何しろ多い。多いけれども。
よく見るとザコも多い。
強化、防御魔法を掛ける。
僅かに緊張が和らいだ感。
大丈夫だ。見捨てないよ。
ガイゼル達の間から子供達が構える。
銃士隊、膝射姿勢。
ルーシャ、ユッタの真似して。
弩兵隊、立射姿勢。
テルーザ、こう。
もう少し上に上げて。
弓兵隊、放物線軌道。
エメリナ、もうちょい下で良い。
射線上に注意。警告。
レグハルトの隊がブチブチ反発している。
俺の指図など受けたくない、か。
まあ、生き返る神人だ。
最悪、死なせても構わんのだが。
バリーがヤベェを連呼。
誘導してくれている。
弓兵隊、複数射構え。
付与魔法は錬成、タール。
弩兵隊、炎付与。装填急げ。
銃士隊、重力付与。
弓兵隊、斉射。
弩兵隊は少し待て。
前衛の背を越し、狙い通りの放物線。
高く上がった矢が上から降り注ぐ。
アンデッド達に襲い掛かる。
着弾。付与魔法からタールを撒く。
弩兵隊、斉射。
タールが一斉に燃え上がる。
燃え残って抜けて来る奴らも居るが。
銃士隊が狙い撃つ。
「ああっ、あそこ燃えてない。
沼だ。埋めらんない?」
ティルア参謀、早速献策を始めた様だ。
土魔法付与、沼地を埋めようか。
「あっ、そういうので良いんだ」
「負けてられねぇー!」
カリマとマルカにも火が入った様子。
何でも言ってみなさい。
「スケルトン来ます!
分解魔法を!」
レーネが先を越した。
分解魔法付与。
嫌な感じにゾンビを混ぜているな。
排除が捗らない。
味方半数に神聖魔法付与。
それぞれ倒し易いのから倒せ。
敵からの応射。
ガイゼル達の盾、俺の障壁魔法が防ぐ。
魔法攻撃には反射魔法。
大丈夫。防げている。
阻害よりは倒した方が早いか。
余裕があるなら、時限発動式魔法。
周囲に範囲活力魔法を設置。
状況。探知と空間、解析魔法。
ザコが来る分には損害無し。
ふと敵影が途絶えた折。
巨大なゾンビが見えた。
継ぎ接ぎがある。
フレッシュゴーレムの類だろう。
3階ぐらいありそうな巨体。
あれで突っ込まれたくない。
ないんだが、何だ。
こっちに向かって来ている。
勇者達は……スルー。
どっちがどっちをスルーした。
ゾンビに効くのは……悪臭。
調香魔法を付与。連射。
嗅覚が遮断される。
フレッシュゴーレムの足が止まる。
すかさず錬成魔法、炎魔法を付与。
集中攻撃で焼く。
「グ、ウ、ウゴゴゴ」
なかなかしぶとい。
遅延、軟化、強酸魔法を追加。
徐々に鈍り、腐り落ちては行くのだが。
しかし、またこちらに歩き出す。
闘争本能でも残っているのか?
もっと深く撃ち込まないと。
ユッタ、頭を狙えるか?
返事代わりにパキュン。ユッタの射撃。
フレッシュゴーレムの額に穴が開く。
魔法で動くゾンビ。
ヘッドショット1発では死なない様だが。
開いた穴を俺が狙撃。
付与魔法は水、次いで凍結だ。
水は凍ると体積を増す。
フレッシュゴーレムの頭を中から破壊。
首から上が吹っ飛んだ。
どうにか膝をついてくれた。
「ふうん、面白い技を使うのね」
ふと振り返ると若い娘。
身分の高そうな……誰だ?
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