黒鷲の旅団
８日目（10）火の粉を振り払う我ら

　丁度ロードメイアも用事があるという。
　一緒に魔女協会へ。

　用事って？
　俺の作った魔法を買うのか。
　着想に興味があるとかで。
　まあ、意見交換でもしよう。

　魔女協会に着く。
　と、子供達が駆け寄って来た。
　ペトリナから事情を聴いたらしい。

　正直な所、何も出来なかった。
　相手の方が地位も実力も上。
　渡り合うには、今の俺では力が足りない。

「そーんなぁ〜」
「ビクビクしたくないよー」
「でも、捕まっちゃったら大変だよ」
「お兄さんまで居なくなったら……」

　一同、難しい顔。

「いいの、復讐なんて。
　みんな一緒なら、それでいいの」

「ああ、ペトちゃんっ！」

　レーネがペトリナをギュッと抱き締める。

　ペトリナはいいと言うが。
　このままってのもな。
　みんな一緒に暮らす為にも、だ。
　降り掛かる火の粉は払わないと。
　俺とメイア、大魔女達で話し合ってみる。

　子供達は先に授業に向かってくれ。
　習得は通信、治癒と始めて。
　その次は転移魔法だ。
　もっと覚えられる子は、自由にして良い。

　２級魔女魔法授業。
　受けるのはユッタ、イェンナ。
　フェドラ、マリナ、レーネ、ペトリナ。
　ティルア、カリマ、トゥーリカ……
　で、９人か。

　初級を受けるのは。
　マルカ、カーチャ、ノイエ。
　ツェンタ、アイリス、テルーザ、エメリナ。
　フレヤ、ジェマ、ルーシャの10人と……
　花人達も興味があるって？　追加で８人。

　授業する方も大変。
　３クラスに分かれる事に。

「ううー、自分で魔法が使える様になるのか」
「私も使えるのかな……どうかな」

　子供達、わくわくどきどき。

「転移魔法が欲しいとは、
　授業内容も合わせてやらねば」

「弓とか使うんだろ？
　何が良いかなー」

「魔法障壁にも触れておきたいですよね」

　指南役の魔女達も乗り気の様子。
　フリアさん、フッケちゃん。
　フレスさんも、お願いします。
　サンドラちゃんもフレスさんの助手役。
　ついて行った。

　俺とメイアは子供達を授業に見送って。
　大魔女筆頭ジズ様。
　年長者レイヴン婆さんと相談する。

　素行の悪い冒険者。
　ダニエル一味について。
　うちの子、ペトリナが乱暴された。
　瀕死の重傷を負った。
　死なせてと言い出す所まで追い詰められた。
　説明の為、俺の記憶をコピー。
　写真化して見せる。

「な、こんな……なんて事を……」
「やれやれ、類稀なるって奴さね」
「ぶ、ぶ……ぶっ殺！」

　駆け出そうとするメイア。
　落ち着け。殺せないんだって。

　物理的には殺せても。
　相手は貴族だ。追手が掛かる。
　自分１人なら投獄で済む。
　が、仲間が、子供達が居る。
　アフターケアまで手が回らん。
　回らん以上、手出し出来ない。

　しかし同時に。
　鉄槌の１つもくれてやりたい。

　貴族に対抗する手段を考えなきゃならん。
　それと、魔法に関する法規だ。
　やり込めようにも、どこから犯罪か。
　知識を身に付けなければ。

「一応、先に言っておくが。
　魔道の法に抜け穴など無いぞ？
　門弟に図書館の法律書を集めさせよう」

「この老いぼれが罪を被って殺しても良いが。
　ハインちゃんも考えがあるみたいだねえ。
　まずは見回りから始めてみるとしようか」

　すまん。恩に着る。

　うちの子に死なせてとまで言わしめた。
　ただ殺したのでは、まるで足りない。
　必ず報いは受けさせてやる。

　メイアは宣伝を。

　出来る範囲で話を広めて欲しい。
　注意喚起。可能ならダニエルの悪評を流す。
　犯罪者として逮捕出来るならそれも良し。
　出来得る限り失墜させてやるんだ。

　あと、考えるべきは魔王軍への対処だが。
　どうやっても勝てない相手に出会って。
　そんな時、どうするか。
　帰還魔法のスクロールなる物があるらしい。

　スクロール。羊皮紙の巻物。
　広げてかざすと中の魔方陣が浮き出る。
　秘められた魔法を発動する。
　魔力消費は無し。
　決めた場所にしか飛べない。
　簡易の人体転送魔法だと。

　巻物を広げる間があるかどうか。
　その前に首を跳ねられそうな相手だが。
　距離が開いていれば使い様はあるか。
　１枚10万。高いが、背に腹は代えられない。

　全員分、買い……たいが。
　金が足りない。

　在庫も不足。
　20も置いとらんわとジズデリア。

　いずれ全員に持たせたいとして。
　当面は自分でやるか。
　転移魔法を設置発動しておいて。
　みんなで逃げ込むとか。

　とりあえず金策として、特許申請。
　創傷・整脈魔法をお願いします。

「ほう、また医療術！
　やはり相性が？」

「あたしの腰痛を治す魔法も頼むよ」

　魔女様方の反応。
　創傷より整脈魔法に食い付いて来た。
　特許は取れそう？　それは良かった。

　ふと見ると、後ろ。
　悔しがっているメイアさん。
　意見交換をする約束だったな。
　魔女協会の敷地、練習場へ案内しよう。