黒鷲の旅団
8日目(12)広く声を繋げて
フィールドへ。方針はどうしようか。
もうゴブリンぐらいで怯む子達ではない。
ないけど、油断はしない様に。
通信魔法で連絡を取り合いつつ。
広く布陣。駆け付けられる距離を保つ。
各自で戦闘を行う。
銃士隊、弩兵隊、弓兵隊に分かれて散開。
花人達は2〜3人ずつ分散。
子供達の援護につけた。
アンゼさんには旗を持たせる。
俺達、指令本部に随行して貰う。
通信。探知魔法は届いているか?
『大丈夫だよー』
『問題ありません』
『パン! パパパパパン!』
銃士隊、返事より先に銃声。
撃っちゃった。
ユッタ、大丈夫か?
『あ、はーい』
可愛い顔してアグレッシブだな。
全体、なるべく新人にも的を譲れよ?
経験の配分だ。倒させてあげる様に。
それから、通信の仕方だ。
まずはこちらから質問する。
答えてみよう。
連絡役は副隊長に指名。
他の子も聞けたら聞いていて。
どんな事を伝えなければならないか。
聞いて覚えて行く様に。
それでは……まず、何か見える?
気付いた事はあるかな?
『ゴブリンです!』
早速ペトリナ、何匹いる?
『え、え、えーと』
『2、4、6……12!』
ティルアが素早く割り込み。
情報には早さも大事だな。
ペトリナ。
急に聞かれると慌てちゃうか。
先にある程度考えておくと良い。
どういう事が聞かれるか、とか。
どういう時はどう言おう、だとか。
少しずつ覚えてみよう。
『こっちもゴブリンだよー。
武器持ったのが3……4か。
あと、オオカミが沢山。
沢山、でいい?』
イェンナ、良いぞ。
武器を持ったのが、ってのは必要な情報だ。
沢山、は……そうだな。沢山で良い。
こっちより多いとかがあると尚良い。
再度探知。各隊に探知情報を共有。
さあ、沢山居るオオカミをどう料理する。
『タール撒いて火をつける〜?』
『そ……ち、違う!
花人の姉ちゃん、イバラ! 防御!』
攻撃を提案するフェドラだが。
マルカが堅実な献策。
イメージと逆だったが、正解だ。偉いぞ。
と、フェドラから小声の通信。
褒めてあげてね、と……
花を持たせたのか。こっちも偉いなぁ。
俺達、指令本隊。
丘の上に登って状況監視。
敵、来てる、とサンドラ。
うん、言ってあげて。
「あっ、ゆゆゆゆユッタたん!
右っ! 右後ろ!」
『えっ? わああ、本当だ!
迎撃! 迎撃します!』
その調子。
サンドラちゃんも、お喋りの練習だ。
数が多そうだ。
俺も狙撃銃で援護する。
サンドラ、トゥーリカ。
引き続き監視役を頼む。
「あっ、後ろ。誰か来てるよ」
「あ、おっさん」「うーす」
トゥーリカの声に振り返ると。
ブレイドレイド一行か。
フォルンやキッシュ。
グリモが同行している。
レグハルトとは別れたんだったな。
魔王討伐はお休み。
方針が近いから組んでみたのか。
「それだけでなくて。
あいつ。レグの野郎」
「荷物持ってっちゃったの。
宿においてたの、全部」
勇者、窃盗か……冷静でないな。
慌ててどうなる。
魔王討伐、急げる物でも無いだろうに。
魔王の娘にさえ歯が立たなかったんだ。
フォルン達は生活用品から買い直したい。
手早く稼ぎたいのもある。
ブレイド達と組む事にした。
魔王は倒さなくとも、レベルは欲しいしな。
しかし、広域索敵・殲滅中。
このまま行くと、獲物が居なくなる。
欲張らず、少し譲ろうか。
レーネの弩兵隊がサイクロプスに接敵。
ユッタも逆方向に見つけた。
えー……レーネのが近くて悪いんだが。
そいつは放置して。
ユッタの方に向かってくれ。
弓兵隊も集合。
全員で銃士隊の見つけた奴を倒そう。
『えっ、あ、仰せのままに!
総員、転進!』
『え、え、大丈夫だよ。
何かあったの?』
順に説明する。まずは戦ってみてくれ。
俺は狙撃銃に神経魔法付与。
レーネ側のサイクロプスの足を止める。
ブレイド達にその位置を示す。
「へへっ、悪い。貰っとく」
「あんたも気を付けてなー」
ブレイド、フォルン達が駆けて行く。
俺はマリナの弓兵隊と合流。
レーネ達を追いつつ、ユッタ達の所へ。
着くと、サイクロは既に轟沈していた。
ユッタ、大丈夫だよ?と首を傾げる。
レーネを待つまでも無かったか。
お前さんも上手になったよなぁ……
前へ
/トップへ
/次へ
|