黒鷲の旅団
8日目(13)生肉送迎団

「そっかー、他にも来てたんだ」
「敵じゃないから気にしてなかった」

 ブレイド達が来ているのを知って。
 ユッタとイェンナ納得。
 自分達も金が要る。家を買いたい。
 マリナの家の借金返済もある。

 しかし、だからこそ。
 お金が欲しい気持ちは良く分かる。

 まあ、そんなワケだ。
 ブレイド達もお金が欲しい。
 奪い合いにならない様に進路を変えよう。

 全員集合。隊列を整える。
 分散していた花人も1部隊に纏め……
 ん、増えてる?

「増えてないよー」

 そうか?
 そこの紫の子は新顔の様な。

「結構前から居たー」
「ご主人、鈍いー」

 うっ、そ、そうか。
 俺が気付かなかっただけか。
 と、アンゼが気を利かせた。
 前に押し出してくれた。

「あ、あう。わたしかー。
 申し遅れたです。
 ルピリエッテ・ルピナス
 ・メッテルリッヒ。
 みんな普通に居るからな。
 入って良いかなーって。
 ダメだったかー? ごめんなー?」

 いや、仲間に入るのは構わないんだが。
 街に入る時に使い魔の首輪が要る。
 入る時には入るって言ってくれ。

 新顔ルピリエッテも仲間に加えて。
 迂回しつつ、街の周りで薬草の採取。
 あるいは肉を食べられるモンスターの狩猟。

 今日2級の授業を覚えた子。
 転移魔法もあると思う。
 初級の転移魔法だ。
 トランスポートアイテムを試してみよう。
 それぞれ、自室の保管箱……あるかな?
 そこにアイテム、所持品を送る魔法だ。

「あっ、やば!」

 イェンナが失敗。
 生肉をそのまま自室に送ってしまった>
 送られてどうなったか想像に難くない。
 イェンナ、グネグネ。
 箱が脂でメタメタになるぅ〜、と。

 一度、俺にくれる宣言をして貰う。
 所有権の移譲。
 生肉に転移魔法2級。
 コールストレージの魔法で呼び出す。
 脂でテカテカした肉が出て来た。

 脂、あんまり広がってないと思うが。
 帰ったら掃除しよう。
 イェンナに肉を返すと、テヘヘと笑った。

 次は、ハチミツを見つけたマリナ。
 お母さんに持って帰りたい。
 が、ハチの巣ごと転送はマズいだろう。

 汚れ物、ナマモノ、危険物。
 液体とか広がり易い物。
 そういった物を転送するには工夫が必要だ。
 袋とか包む物、瓶、器になる物が欲しい。

 俺は魔力薬を飲む。
 空き瓶を水魔法で洗う。
 洗った空き瓶をマリナにあげよう。

「瓶かぁ〜。
 もっと持って来れば良かったな」

「えー、でも重いよー」

 そう。そこでコールストレージなんだ。
 転移魔法を練習しよう。
 その2段階目を覚えるのが目標。
 部屋に置いて来た瓶とか矢弾。
 これをこいつで呼び出せる様になる。

 まずは練習だな。
 薬草、鉱石、貝殻、魔物素材。
 そのまま送れそうな物から送ってみよう。

 開けた草原で一度、進軍停止。
 焚き火を起こして肉や魚を焼く。
 もう食べる気で居るジェマとフレヤ。
 自分の食べる分は自分で持って来いよ?

 弓で狩猟。標的はボア。イノシシだ。
 人狼フレヤはパワーがある。
 当たれば大体一撃だが。
 当てるのは器用な猫人ジェマの方が上手い。

 しかし同じ弓兵で上手いと言えば。
 エメリナ。走りながら弓矢を当て続ける。
 波間に生きる人魚の末裔だ。
 平衡感覚にも優れていた。

 ツェンタとテルーザは採取の方が楽しそう。
 野苺を見つけてパクついている。
 と、目が合った。隠さなくて良いぞー。

 ルーシャは先輩達に腕前を見て貰っている?
 逆か。ユッタがルーシャに聞いている。
 不自由な義手での装填。無駄が無くて速い。

 若干伸び悩んでいるとすれば。
 視力の弱いアイリスが気になる。
 ウェルベックにメガネの作成を依頼したが。
 そろそろ完成しただろうか。

「くっ、くあ〜〜〜……」

 カーチャが欠伸。潮時だな。
 新人達、魔力切れが始まっている。
 集合。帰還に掛かろう。

 アイリスのメガネ。
 イェンナの保管箱も気になる。
 ギャーそうだった、とイェンナ。
 一同爆笑。

 先輩チームはまだ余裕だな。
 基礎レベルに加え、スキルレベル。
 伸びて来ているからだろう。

 魔女協会の授業と儀式。
 解析した限り、身に付いたのは魔力スキル。
 魔法を使っていれば経験点が入る。
 スキルレベルが上がれば、基礎魔力を補助。
 パラメータを強化してくれる。
 パッシブ系スキルという奴だ。

 眠くならない加減を覚えつつ。
 今後も練習を続けよう。

「あ、あ、おおおお肉どうしよう」

 サンドラちゃん。
 焚火の周りに生焼け肉の残り。
 置いて行くのも勿体無いか。
 加工を急げないか試してみる。

 並列、黒煙・焦熱。
 連射並列、防腐・乾燥魔法。
 燻製魔法スモークフーズを発動する。

 地味な魔法を作ってしまったが。
 製品はぼちぼち。
 燻製になった肉を回収して。
 それじゃ帰るとしようか。



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