黒鷲の旅団
8日目(14)義足とサブマシ
「それじゃ、後でね」
「ごめんなー」
イェンナは部屋の掃除に向かった。
先に女将にも連絡してある。
見ておいて貰ったのだが。
それでも気になって仕方がない様子。
イェンナの銃はユッタが預かった。
ハミルトンの店で整備。
カリマとノイエも銃の手入れに向かう。
マリナやフェドラ、マルカは魔女協会へ。
サイクロプスの牙や何かを売りに行く。
売ったお金は分配して、それぞれ仕送り。
マリナの家、下層区の教会。
それとマルカ達の故郷にも。
あとはジェマやフレヤ、カーチャ。
魔力切れで眠い子達。
ご飯前の一眠りを指示。
俺はアイリス、ルーシャと行く。
ウェルベックの所へ。
アイリスのメガネは完成しただろうか。
あと、ルーシャの義肢も整備を頼みたい。
メガネの方は完成していて。
しかし作り手の方が不満げ?
完成度に納得していない様子。
繰り返しアイリスの視力を。
メガネの度合いをチェックする。
「これでも大分見えるよ?」
「もっと見える様に出来るハズなんだ」
職人肌のウェルベック。
『完璧』も良いが『急ぎ必要』でもある。
もう1つ分の費用を出す。
取りあえずの品を受け取りたい。
「そ、それもそうだな。
検眼だけにして、練磨は後で。
代金は……ああ、そんなに取れないよ」
遠慮するウェルベックだが。
ここは受け取らせる。
あんたの生活が立ち行かないと困る。
鑑定、目利きスキル。
メガネの価値を算出。
手間賃や次回の手付金を上乗せ。
開発支援金も出したい。
大雑把に20万という事にした。
それから……ルーシャの義肢の方。
汚れやサビが目立つ。
これは手入れするとして。
構造は少し良さげ。
バネで関節を曲げられる。
これにはウェルベックも関心顔。
「これ、凄いね。
一体どこで?」
「お爺ちゃん。死んだお爺ちゃんが。
作ってくれました」
「そうか……うん、良い出来だ。
とても参考になる」
故人の作と聞いたからかな。
若干戸惑ったウェルベックだが。
自慢の祖父を褒められた。
ルーシャはむしろ嬉しそう。
磨いてサビを落として、機械油も入念に。
整備費用、相場は2万。
貰えないとウェルベックだが、貰って貰う。
繰り返すが、あんたも食って行けないと。
「じゃ、じゃあ、これ良かったら」
『初級工学指南書』をくれた。
工学や設計スキルが習得リストに上がる。
自前でも多少の修理が出来るのは良いな。
バリスタや投石機も作れる?
負担も凄そうだが。
お互いに礼を言って。
俺達はウェルベック宅を出る。
夕食まで、まだ少し時間があるか。
ルーシャに寄りたい所があるという。
俺も同行してみよう。
ルーシャが向かった先。
ルーマニア銃士協会、だった。
「おっ、ヒーローじゃん」
「ダンピールちゃん、元気してる?」
東区北端、銃士協会。
出迎えたのはフィービィと。
同僚アルビルダ、メアリアン。
「そ、その節は、お世話に」
「あー、良いって良いって」
ルーシャに俺の事を教えたのは?
メアリアンだったか。
一言礼が言いたかったルーシャ。
礼儀正しい。
祖父のしつけも良かったんだろう。
「ああ、魔法銃士って奴」
「ウルティマ・ラティオだろ?
見せてくれよー」
「銃売ってる店、教えてやろうかー?」
ファンタジー世界で銃士。同好の士。
銃士協会は神人・NPC問わず。
概ね好意的だった。
銃士協会内部でも、銃器の手配が出来る?
まずは見せて貰うと。
短機関銃がある、だと?
「あー、サブマシなー。
昔使ってたわ」
「ちょい強い敵だとな。
すぐ魔法障壁で弾かれちまうんだ」
どうも人気としては微妙な様だが。
しかし、ちょい強くない大量のザコ。
それなら捌けるハズだ。
防御さえ貫ければ、連射だ。
魔法付与による阻害も効果的だろう。
短機関銃アーセナル・シプカを購入。
54万。少々値が張るが。
良い買い物だと思う。
ついでに小型拳銃デリンジャー。
小型だが10万するのはレアだからか?
2級の銃技指南書とやらも頂こう。
銃器取扱店、他には。
ブラックマーケットにも露店があるとか。
対物火器も置いているらしい。
今度探してみるよ。
「お、おーい、待ちなって。
入会してかないのか?」
銃士協会支部長エンリコより。
ギルド入会の勧め。
そうか、普通は入会金が要るのか。
魔女協会はサービスしてくれちゃってた。
入会。あと、称号申請。
銃士には銃士の称号管理がある様で。
銃器全般の『ガンナー』称号。
これを『ハイ・ガンナー』に向上。
専門職は狙撃の『スナイパー』と。
中距離の『ガンスリンガー』も申請。
対応する銃器、狙撃銃、拳銃。
それぞれ与ダメージを追加する。
入会金は最初だけ払えば良い様子。
ギルド専門の依頼もあるという。
また立ち寄らせて貰おう。
フィービィ達から食事に誘われるが。
悪い。先約だ。
マルカから通信が来ている。
素材を売り終わったので、配達屋。
今行くよ。
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