黒鷲の旅団
8日目(15)手段は何でも良いけれど
「へっへへ、また来ちゃった」
「えっ、あ、ああー……」
配達屋で得意げなマルカ達。
戸惑っている受付さん。
俺の噂でも聞いたかな。
金をどこに送っているかと聞かれ、
「あたしらの住んでた教会だよ」
「おじさんが稼がせてくれるんだ」
「稼ぎ……え、っと、何をやって?」
何をやっているか。怪物退治とか。
サイクロ1体ぐらいなら余裕。
マルカ達でも倒せるな。
「指導が良いもんね」
「へへ、まあ、そこは認めてやるよ」
「そ、そうなんだ。へぇー」
言いながら、何かを確認する受付さん。
住所は確かに教会と書いてある。
受取人は『シスター・マイナ』だと。
マルカ達の保護者かな。
目の泳いでいる受付さん。
小声で聞こう。
噂とちょっと違ったかな?
「あっ、す……すみません」
まあ、そんな所だろう。
外面上は親子という事で頼む。
孤児だからと虐められても困る。
「あ……あっ、いえ。はい。
そっか、子供使いっても子守の人だ」
受付さん、何か思い当たったらしい。
騒がせて悪いな。今後ともよろしく。
マルカの送金依頼を済ませて。
今度は再び魔女協会へ。
イェンナの掃除は大丈夫だった?
臭くなったから箱を買い替えたのか。
アイテムボックスって高いのだろうか。
家具というか設備のアレ。
全然買える……それなら良いんだが。
あんまり困ったら言ってくれよ?
出迎えたのは大魔女フリアリーゼ。
大魔女フッケバエナも。
特許の件を聞かされる。
大陸魔法機関も評価を急いでくれた様子。
整脈魔法は治癒B。
創傷魔法は攻撃Bクラス。
氷花魔法は攻撃Aクラスの認定を受けた。
売り上げは970万。
相当額が入っているが。
にも関わらず、フリアリーゼ陳謝。
資産が足りないらしい。
習得が間に合っていない様だ。
相場の半額ではあるにせよ。
俺に納める売上金が要るか。
分かった。
俺から300万の資金援助を出す。
魔王軍が迫っている状況。
自分や仲間、住処や故郷を守る力は必要。
上級魔女だけでも緊急時に備えて欲しい。
深々と頭を下げるのはフリアさん。
「あっ、待ってましたよー」
フレスさんが呼びに来た。
案内された先は、使っていない古い学舎。
これを本格的に貸し出してくれるという。
ちょっとボロだけれども。
修繕すれば使えるだろう。
「本館の部屋より見劣りして……
ちょっと申し訳ないですけど。
気兼ねなく使って頂いけますので」
物件を探している、とは伝えてあったか。
見劣りは、まあ、間違いなく。
少々雨漏りするとか、壁に穴があるだとか。
修繕費として200万出す。
俺ではどこに手配して良いのか分からない。
全面的にお任せします。
足りなければ順次追加する方向で。
一先ずの住居が手配が出来た。
所持金残額470万程度。
受付で、帰還のスクロールを発注する。
10万を30枚で300万。
1枚は妖精用に小さく……
出来る? お願いします。
在庫が足りないのは聞いている。
完成したら知らせてくれ。
次の魔軍襲来に間に合えばベストだ。
前金で300万支払って。
残高170万と少々。まだ何か買えるかな。
「ちゃんと自分のも買った?」
ポケットからトゥーリカ。
30とは聞いていたと思うが、計算は苦手?。
買ったよ。自分のと。
花人、お前や子供達の分。
俺、お前、サンドラ。他に子供達が18人。
花人が9人で……ちゃんと30だ。大丈夫。
ならよし、とトゥーリカが頷く。
俺が逃げないと、逃がしても戻って来る。
自己保全関連では、俺は少々信用が無い。
「そうそう、分かってるじゃん」
偉そうに踏ん反り返る妖精さん。
段々、副官っぽくなって来たな。
各隊運用。隊長、副長、参謀役。
サンドラが参謀だから、お前は俺の副官か。
悪くないかもねと、すっかり得意げに。
一見澄ましているが。
口元がムフムフ笑っている。
酒場に戻る。夕食を取りながら反省会。
反省と言っても叱る様な事は無いが。
……いや、あった。あったな。
エメリナ、テルーザ。
人前で胸を出さない様に。
「えー。だって、おじさんを喜ばせようと」
「俺の女のだから他の奴に見せるな、だよ」
フェドラさん、その説明は……
「そっかぁー。えへへへ」
「それじゃあ、しょうがないね〜」
エメリナとテルーザが納得。
納得してくれるなら、もう何でも良いか?
と、聞いていたのか。
じっと自分の胸を見るレーネ。
フェドラと見比べるユッタ、ペトリナ。
今度はまた違う方に飛び火して……
ああ、もう……
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