黒鷲の旅団
9日目(1)ちゃんと朝ご飯
「おはようございまーす」
窓の外、フレスさんの声で目が覚めた。
子供達が朝食に集まって来た様だ。
悪徳冒険者ダニエル一行が野放しの現状。
昨日は子供達の後を付けようとしていた。
接触して来ても嫌だ。
フレスさん達に送り迎えを依頼。
魔女協会に寝泊まりする子達。
その護衛をして貰っている。
無償で引き受けてくれた。
ついでに、本日の魔法の売り上げ。
早くないか。
俺の支援金、帰還スクロールの売り上げ。
これを伝承料の支払いに回したらしい。
売り上げとして590万。
ド貧乏から小金持ちに逆戻りとなる。
今回の特許申請。
解熱・抗血清・燻製魔法。
ヘリヤは燻製魔法に大爆笑した。
「これを魔法にしようって。
趣味感が好きだわー。
レイヴン婆さんとかスゲェ喜びそう」
「魔法ってね。本来は。
戦いとか戦争の道具じゃないんだよ。
みんなの生活を良くする為の物だ。
だから……何て言うかな、うん。
ここで今こうして居る君が。
君でいて本当に良かった。
はは、上手く言えないや」
シャンタルは抗血清魔法に感動気味。
少なからぬ好意と……
羨望や賞賛は大袈裟だが。
今後ともの友好関係を約束する。
子供達の住居、魔法教育。
まだまだ世話になる事だろう。
少し遅れて、マリナとベラ。
ユッタとハミルトン。
自宅組が来店する。
ベラさんが眠そうなのは仕事明けか。
他方、酒場に寝泊まりしている者。
俺を除いて5人。
イェンナ、フェドラ、レーネ。
ペトリナ、トゥーリカ。
ティルアとカリマは魔女協会側。
マルカ達と一緒に移った。
揃った所で朝食を。
女将だけでは大変だ。俺も手伝おう。
「あ、あっ、私も」
「私も手伝うよ」
マリナとユッタが手を上げて。
負けじと思ってか、イェンナとティルア。
やがてぞろぞろ……って、おい、全員か。
厨房に入り切れないから。順番だ、順番。
裏手で花人達が農耕魔法。
イモとか取って来……おーい。
5人も一度に出るな。詰まっとる。
ジェマとツェンタ、危ない。
皮むき用ナイフを取り合うな。
お手伝いして偉いねぇ〜とヘリヤ。
教育が良いんですねとフレスさん。
これにベラさんがちょっと照れた。
朝食のメニュー。
パン、厚切りフライドポテト。
キャベツと燻製肉の炒め物。
野菜たっぷりスープの4品。
敵襲の鐘も鳴っているが。
募兵役はまだ来ていない。
それぞれ落ち着いて食べなさい。
「む、食事中に失礼する」
騎士団長が来訪。配下は新顔の男女。
騎士ヴォルフラムと騎士ユールヒェン。
これまでは北側勤務だった様だ。
本日の配置。
俺達は北側に回されるらしい。
あとの編成は騎士団長や兵士達。
唯人、つまりNPCが中心となる。
気になる反対側、南門の守りだが。
魔人の対抗馬としては。
イーディス公主とランスロット。
剣士キャスティーナと。
寝返ったアシュリィも配置につく。
他にも各種戦闘系ギルドの重鎮達。
その他、大小の傭兵団が参戦予定。
金の力で召し上げて、最大戦力で臨む。
一方で、神人の各冒険者チーム。
今回の参戦を拒否したという。
こちらの状況だけ見れば無理も無い。
昨日は惨敗だった。
助けに来るハズの公主が来なかった。
魔人から散々嬲り殺しにされた。
捨て石にされたと不満に思っただろう。
しかし、公主は公主で頑張っていた。
そこに不満を言われた物だ。
すっかりフテてしまった様子。
もう冒険者には頼まないと言っている。
その酷い有様。
戦闘狂のアシュリィも同情したとか。
今回もまた、俺達の役割は足止め。
今度は人間の兵士が相手だ。
前衛は騎士団に任せる。
気負わずに行こう。
それと……通信魔法。
届くか、デルフィアンヌ。
『あら、ハインじゃない。
仲間になる覚悟でも出来た?』
逆にお前さんを味方に引き込めないか。
さすがに無理かな。
残念ながら、今日は北門勤務だ。
今日の戦いが終わったら連絡をくれ。
また話でもしよう。
大丈夫と思うが、間違って死ぬなよ?
『ふうん……心配してくれるって奴ね。
まだよく分からないけれど。友達。
ふふ、そうね。まあまあだわ』
上機嫌そうなデルフィアンヌ。
通信を切り掛けて……
『あ、待って。ふふ、大丈夫みたい。
私達もそっちに行くわ」
……何だって?
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