黒鷲の旅団
9日目(11)急な遠足

 魔女協会を出て冒険の支度に掛かる。
 矢弾の補充、武器の手入れ。
 あとは送金をしないと。

 マリナの家にはマリナとペトリナ。
 東区の教会にはイェンナとカーチャ。
 俺とマルカ達で配達屋に行こう。

 銃士隊はユッタ、弩兵隊はレーネ。
 弓兵隊は副長フェドラが引率を代行。
 鍛冶屋と道具屋で整備や補給を。

 サンドラちゃんにはお金を預ける。
 俺の分の矢弾補充を頼む。
 人手は花人隊を随行させる。

「だ、弾薬、多めっ」

 そうだよー。あの『タタタ』だ。
 弾薬を沢山使うからな。

 この辺はゲームらしさというか。
 再現が適当なのか。
 弾薬補給に互換性がある。

 勿論、専用弾、特殊弾頭も売っているが。
 別格なのは弾薬パックの中身。
『ライフル用汎用弾』とかだ。
 多少の口径の差は無視されている感。

 しかし、問題は量だった。
 弾薬パックの内容量に限度がある。
 M2の給弾ベルトを充足する。
 それにはどうしても数が要る。

 さて、配達屋へ行ってみると。
 何やら慌ただしい気配。
 配達員の若者が包帯を巻いていた。
 負傷したのか血が滲んでいる。
 戦争に? ではなく?
 魔物に襲われたのだという。

「すまねぇ。嬢ちゃんら。
 金を届けられなかった。
 畜生。何で。
 モンスターのくせに。
 何で金なんか狙うんだ……」

 悔しがる配達員ヨアヒム。
 まずは治癒魔法。傷を治そう。

 普段から危険のある仕事ではあるが。
 今度の魔物は特に様子がおかしかった。
 統率の取れた動き、執拗な追跡。
 しかも金の使い道が分かる魔物?
 野良ではなくて魔王軍だろうか。

 ヨアヒム、村までは届けられなかったが。
 しかし奪われず。
 どうにか金を持ち帰った。
 こちらで返金を受け取って。
 今度は自分達で届けに行くとマルカ。

 魔王軍が出歩いている。
 正直心配ではあるが。
 ここで俺が行かないと言った場合。
 今度は自分達だけで行くのだろう。

 ……まあ、そうだな。
 みんなで行ってみようか。
 ただし、ヤバそうなら一旦戻る。
 見捨てない。見捨てないけど。
 応援を呼びに戻る。良いな?

 子供達に通信。集合指示。
 集合場所は南門にする。

 村の方角は西だったが。
 首都の西側は神聖教会の支部近辺。
 連中とは正直あまり関わりたくない。
 南門だ。各隊、合流を……

『おおおお兄しゃん〜』
『ごめんなさーい』

 困った様な声。
 サンドラちゃんと、後ろにドリスさん?
 在庫の補充が滞っている?
 配送の馬車便が遅れているらしい。

 西側の街道が音信不通に。
 嫌な感じだな。
 一先ずの影響。
 弾薬パックが在庫切れ。

 分かった。
 もう1つ当てを当たってから行く。
 マルカ達は南門に先行させる。

 俺は銃士ギルドに向かった。
 受付の補給品売り場だ。
 弾薬パックがあったハズだ。

「おう、あるぜー?
 何かあったか?」

 銃士ギルド受付。
 出迎えたのは支部長エンリコ。
 耳に入れたい事がある。

 西側でモンスターの活性化。
 魔王軍の疑いあり。
 道具屋の物資枯渇。
 西からの流通が止まっている。
 容疑は魔王軍ないし公国軍。
 何かの破壊工作かも知れない。

「そりゃ頭が痛いな。
 よく知らせてくれた。
 冒険者ギルドには……まだか。
 こっちから知らせておく。
 こいつは情報料だ。報酬を出そう」

 情報料と称して2千。
 依頼達成扱い。
 スキルポイントも1つ増えた。

 物資の枯渇。
 早速貼り出される依頼。
 ああ、鉱石ならすぐ出せるぞ。

 錬成魔法、鉄鉱石納品依頼。
 これを2つばかり達成。
 ヨアヒムの無償医療分もあった。
 スキルポイントが4つ。
 新兵器でも追加して行くか。

 自動小銃のセトメ・モデロ58。
 突撃銃ハーネルStG44を買って行く。
 同系統では初期型だが。
 それでも連射は魅力だ。

 散弾銃も新調した。
 サーブ・スーパーショーティ。
 村は森の中。丈が短い銃も欲しい。

 称号は連射の『アサルト』。
 散弾の『バラージ』も申請した。

 マルカの通信が来て。
 大丈夫だ。今行く。

「だ、弾薬がっ。
 あんまり無かったよう……」

 南門に着くと、息を切らせたユッタ。
 ションボリした顔。
 他の銃士隊もどこか不安げだ。

 そんな銃士隊の諸君。
 弾薬パックを配るぞー。
 銃士隊6人にパック5個ずつ。
 俺の分も入れて50個買って来た。
 流石は銃士ギルド。
 備蓄にはまだ余裕があった様子。

「流石だね!」
「スゲェー!」

 目をキラキラさせる子供達。
 いや、流石なのは銃士ギルドでだな。
 そんな羨望の眼差しを向けられても。

 ……まあ、何でも良いか。
 出発しよう。

 地図と人伝の話から計算。
 マルカ達の村まで。
 大人の足で4時間は掛かると。

 加速魔法を駆使したとして。
 およそ倍速でも、子供の足。
 3時間ぐらいかな。

 合間に戦闘が入ればどうなるやら。
 今、大体3時ぐらい。
 何とか夕暮れまでには辿り着きたい。
 着きたいが……どうかな。



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