黒鷲の旅団
9日目(18)毒には毒を
通信魔法から『音』と。
遮光魔法から『遮る』の要素。
隠密と障壁、結界、防御で……よし。
防音魔法サウンドプルーフを生成。
音を消す、ではないが。
外部に漏れるのを防ぐ魔法。
テント状に半透明。
防音空間を作り出した。
防音。寝た子供達を起こさない様に。
装備の修繕をしつつ周辺警戒をする。
幸い、防音魔法。
探知魔法を遮らない。
ただ、効果持続時間が分からないな。
先に鍛冶作業にしようか。
刀と片手半剣から打ち直そう。
弓、クロスボウの弦の張り替え。
各種銃器の分解整備。
ウルティマ・ラティオを手に取って。
……ん、何だ?
耐久値を見ようと鑑定した所。
見慣れぬ情報が現れた。
有効射程、最大射程。攻撃力。
投射系・貫通属性の武器である、と。
何だコレはと首を傾げ。
思い当たる。工学スキルとかだな。
鑑定スキルに影響しているのだろう。
修繕しつつ、他の装備は。
これまで集めた装備を眺めてみる。
銃、剣、靴やグローブ。
数値化された攻撃力、防御力。
ああ、あと腕だ。
義手、ギミックメタルアーム。
こいつの性能を鑑定する。
耐久度とか基本性能は良いとして。
付属機能、バーストレーザー砲とやら。
機能を確認したい。
バーストレーザー砲、概要。
有効射程100m〜1km程度に調節可能。
秒間1万×(1+魔力×0.01)?
防御無視固定ダメージ。
これを最大20秒間連続で照射する……
ただし撃ち切るとオーバーヒート。
次の使用まで放熱が必要になる。
弾薬は不要。
魔法力ゲージと耐久値を消費する。
……使い難いわー、という印象。
解析で垣間見た魔人達のHPは100万超。
全力で照射しても、単純計算で20万。
俺の魔力を適用しても30万を越えない。
とても倒し切らん。
一方、子供達のHP。
多めのマルカでも200ぐらい。
変身したレーネで400手前か。
レベル1の通行人なんて100も無い。
そこに1万ダメージだぞ。
掠っただけで蒸発する。
誤射や巻き添えが怖い。
加えて、基礎構成。
材質は主にジルコニア。
耐熱性セラミックの類か。
装備の修復には基本、同じ材質が必要。
錬成魔法……ジルコン。
まだ生成リストに無い。
馬鹿高い耐久値もある。
お陰で損壊もまだまだ先と思うが。
材料を生成出来ない。
耐久消費は控えるべきだ。
結論……バーストレーザー砲。
普段はロック掛けておこう。
「まだ寝ないの?」
ユッタが様子を見に来た。
起こしてしまっただろうか。
防音はともかく灯りが眩しいか。
ユッタの頭を撫でつける。
寝床に戻らせる。
俺も一回りしたら眠るとしよう。
一回り。教会の周りを周回。
潜伏している村人を炙り出す。
探知に感あり。
チョロチョロと様子を見に来ている。
俺がマイナさんを受け取ったか確かめる。
マイナさんの動きを監視する。
連中の思惑は、そんな所だろうか。
表の生け垣の陰。
若い木こりのユアンとデール。
照明魔法で照らすと逃げて行った。
こいつらは良いんだが。
次、側面方向に農夫モーソン。
俺は彼の下に駆け付ける。
駆け付けながら、銃を抜いた。
銃撃。放たれた銃弾はモーソンを掠める。
掠めて、その背後。
迫っていたゴブリンの頭を貫いた。
「うわっ!?
あ、ああ、ゴブリンか。
すまん、助かった。
なんでゴブリンが……」
振り返るモーソン。
彼の背後は森だけだ。
森から彼まで阻む物は何もない。
彼は村の囲いから食み出していた。
あくまで可能性だが。
モーソンさんよ。
村長にハメられたんじゃないのか?
ボロ教会は村の外れ。
外側から様子を窺おうとする。
結果、村を囲う柵を出る。
冒険者が来たのに死人が出た。
だから冒険者に報酬を出さなくて良い。
そういう状況を作る為に。
その為に、誰か。
シスターの様子を見て来いとか……
村長から言われてない?
「い、いや……た、たた、確かに。
見て来いとは言われた。
言われたが、どこから見て来いとまで」
あんたの他に、ユアンとデール。
ウィルとドネリーも来ていた。
場所が被る。誰か外に回り込む。
回り込んで襲われる。
そこまで読んでいたとしたら?
「そんな……バカな……」
どう思うのも勝手だが。
報酬を払い渋る。
挙句、シスターを生贄にする村長だ。
あんた達、村人の事も、どうかな。
どう思っているのやら。
よく考えて、自分の身は自分で守るんだな。
と、モーソンに“毒”を吹き込んで。
俺はゴブリン達の姿を追う。
後続に本隊だが、斥候部隊程度か。
神経魔法、小太刀と短剣で始末する。
探知……これ以上の増援は無いな。
村に帰還する。
村の柵を植物魔法で補強しておこう。
後は“毒”がどこまで回るかだが……
まあ、明日まで待ってみる事にしよう。
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